第13話

賢人は私の目から頬、首へと手を動かしてから、まわりこんで正面の席に座った。



「感動して泣きそう?」



 ひっぱたいてもいいだろうか。

 

 席を立ち、麗奈のところへ帰りたい。



「俺、由梨が好きなの。わかってんだろ」



 なら、どうして。



「由梨の顔よ。怒ってんの? もっと頼んでいいから」



 男性のウエイターと目を合わせ、メニューを持ってきてもらうように頼む。


 ウエイターに礼を言い、メニューを睨む。



「ウエイターには笑顔かい。あいつ、俺よりイケメンか?」



 目でウエイターを呼び、宮古牛ステーキとマンゴームース、ビールのおかわりを頼む。



「やべぇ。由梨があいつの下にいるの、想像しちゃった。もう一回、トイレ行ってくる」



「あんた、本当、バカ過ぎる」



 賢人の眼鏡の中の目、笑っている。


 私より飲んでいるのに、そこまでは酔っていないのかもしれない。



「男は皆、同じだって。ジェットスキーのにぃにぃだって、ウエイターだって同じさぁ」



「違うと思うけれど」



 泡と麦汁の比率が完璧な3対7のビールが再び置かれ、乾杯してから飲む。



「由梨、まじで俺、由梨とやり直したい」



 なら、どうして、どうして浮気したの? 

 賢人が浮気なんかしなかったら、私達、うまくやっていけたのに。


 お前が全くやらせなかったからだろ。

 たまにやってもイヤそうな顔してたら、俺も傷つくんだって。



「ほら、もっとスマホを見ろよ。あの子と完璧に終わったのがわかるから」

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