第3話 桜田藍  『兄の戸惑い』


「今日ね、青木くんに会ったんだ」

 私が兄に話をすると、

「青木くん?」

 それまで笑顔だった兄が真顔になった。

「青木くんって酷いんだよ。『サクラダ』と何度も繰り返して、私を知らないみたいだった。学校帰りに頭でも打ったのかな? 心配だよ。って、お兄ちゃんどうしたの?」

 兄の表情が曇り、険しい顔になっている。

「いや、何でもない。ああ、青木くんて同じクラスの奴だろ」

 微笑んだのは、いつもの優しい兄だった。

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