第11話 恐怖 ~幹部視点~

 一体この状況はなんだ?部屋に突入されてから数分で全員が拘束された。

 目の前にはガタイのいい男達が4人と仮面をつけた男が2人いる。1人は立っているだけだが、もう1人は他の奴らに指示を出している。


「では、警察に電話していただけますか。殺人者を捕まえたと通報してください。」

「わかった。だがいいのか?」

「はい。我々だけではさすがにこの後の対応はできませんからね。」

 ガタイいい男の1人が電話をかけ始める。四苦八苦しながらも警察に状況を説明しているようだ。私は指示をだしていた仮面の男を睨む。こいつだ。こいつが柳が言っていた男だ。


「手前が・・・。そうか。」

「ええ。ありがとうございます。貴方が柳さんを殺してくれたおかげで現行犯逮捕ができます。」

「柳?誰だそいつは?」

「貴方が射殺した相手でしょうに。そこに隠した死体と拳銃についた指紋に消炎反応。これだけあればまあ貴方達は捕まるでしょう。殺していなければ我々はあなた達に何もできなかった。」

 見ていないはずなのに、隠した死体の場所も特定している。まさか裏切者か?


「!!手前!!顔を見せろ!!」

「嫌ですよ。組織の標的になりたくないもので。」

「顔がわからないといって調子に乗るなよ。手前の事なんかすぐに調べ上げてわからせてやるからな。」

「へえ・・・・・。」

 仮面の男の圧が強くなった。だが今までに感じた圧に比べればなんてことはない。もっと圧が強いやつらとごまんと渡り合ってきた。


「何黙ってんだよ。怖くなったか?だがもう遅い。」

「・・・・煽ろうとしても無駄ですよ。川島花林さん。」

「!!」

 面識がないはずなのにフルネームをあてられた。混乱する。組織でも自分の名前を名乗ることはないから誰も知るはずがない!!急に仮面の男が不気味な存在に見えてきた。


「やれやれ。本当は貴方を捕えれば終わりにしようと思ったのに。どうやら貴方達を潰さないと貴方は満足しないようだ。」

「な・・・なにを。」

 仮面の男は私の言葉には答えず、携帯電話をだしどこかに電話をかけ始めた。


「あ、もしもし。お疲れ様です。お待たせしました。こちらは終わりました。それでパソコンは起動してありますね。今から言うURLにアクセスしてください。」

 そしてURLを言い出す。そのURLを聞いているうちに徐々に震えが止まらなくなる。そのURLは!!組織の幹部用のURLだ!!


「はい。するとログイン画面にいきますよね。では今から言うユーザ名とパスワードを入力してログインしてください。」

 仮面の男が告げたユーザ名とパスワードは、私のユーザー名とパスワードだ。喋ったこともないし、紙にも残してもいない。何故だ!!この男は私の頭の中でも覗いているのか!?


「な・・・なぜおまえがそれを知っている!!」

「あなた方は組織を過信しすぎですよ。情報漏洩をしていないと思っているのですから。あ、ログインできました?ではメール画面になったと思うので、片っ端から携帯の写真で画面を取ってください。ダウンロードや画面キャプチャはできないようになっているので。携帯の写真で。」

「てめえ!!」

「煩いので少し黙っていただけます?全てを撮影する必要はありません。ある程度撮りましたらチャット画面があると思うのでそちらに移動してください。そこでこう書いてください。『部下がしくじったので警察に捕まる。俺の情報の隠滅を頼む』と。それが終わったら、サイトからログアウトしてそのPCは破壊してください。フリーwifiでアクセスしているから大丈夫だと思いますが、万が一そのPCが見つかってログイン履歴を見られるとまずいので。」

「!!」

 身体の震えが止まらない。眼の前の男は一体何だ?仮面の男が不気味で怯えてしまう。こいつは私の死神か何かか?


「大人しくなりましたね。まああなた達は幹部毎で独自に動いているようなので、貴方の情報を隠滅すればこちらに近づくのも遅れるでしょう。」

「本当に・・・何者なんだ。」

「さあ、何でしょうね。それより来ましたよ。」

 遠くからサイレンの音が聞こえる。私はガクリと力を抜くしかできなかった。

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