第18話
私が父親を父と呼ばなくなったのはいつだろうか。
私はそんなことをふと考えながら車窓から流れる景色をぼーっと見つめる。それと同時に、私にとって忌々しい過去がふと頭をよぎる。
『お前は、賢い子だね……』
頭の中をよぎったその声と姿をかき消すように背もたれによりかかり、深く息をついて目をつぶっていると、静かに車が止まり、いつものように皐月が車のドアを開けてくれる。
「いってらっしゃいませ」
かばんを渡す皐月に、私はありがとと小さくつぶやいて校門をくぐる。
「顔色……大丈夫っすか?」
頬に色がないっすよ、と皐月が私の顔、下半分を見ていう。
大丈夫よ、と返しながら多分さっきのことを思い出したからだろうな、なんて考える。
なんで今日に限って変なことを思い出すのだろうか。今日が、あの日に似た変な天気だからだろうか。あの人と久しぶりに話したからだろうか。
「とりあえず、行ってくるね」
「行ってらっしゃいっす」
しんどくなったら我慢せずに帰るんすよ、と皐月の声を背中に、私は教室へと向かった。
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