第15話
あれは來弥が7歳の誕生日のときだった。
七五三の祝いということもあり、色んな家が招かれ、その中には裏の人間も当然のように大勢いた。
その中で、親ではなく、知り合いと一緒に来たのが李織であった。
『この子は僕の幼馴染の娘さんだよ。六道 李織ちゃん。李織ちゃん。この子は久隆 來弥くん。同い年だし、仲良くできると思うよ』
ニコニコと眼鏡をかけた優しそうなお兄さんが紹介してきたが、何を隠そうこの人も裏の人間である。來弥は紹介された少女をみた。
來弥が李織に抱いた印象は、”個性のない子”だった。
六道家はどの界隈でも相当有名で、特に六道家の双子の話は幼い來弥の耳にも入っていた。
しかし、その頃の李織は今ほどではないが、黒髪を少し長めに伸ばし、うつむき加減で、何をしても無表情で話しかけても相槌だけですぐに話が終わる。そして極めつけは子供ではありえないほど目に生気が感じられなかった。まるですでに自分の腎税を悟ったような顔だったな、と今になれば理解できた。
『お前、人形みたい』
『…そう、かな』
來弥の言葉に、李織は困ったような、なんとも言えない顔をする。
『だって話してても笑わないし、相槌打つだけじゃん。そんなのただの人形だろ』
『こら來弥。そんなこと言わないの』
まくしたてるように言う來弥の後方から來弥と同じ髪色の女性が來弥の頭を軽く叩く。
『お母さん、だってこいつ…』
『女の子には優しくしなさいっていつも言ってるでしょ』
『はぁい』
母親に言われた來弥はバツが悪そうな顔をしてうつむく。
『ごめんなさいね。あなたの名前は?』
『六道、李織です』
『…そう、李織ちゃんね。佐伯さんと一緒に居た子ね。私は來弥の母の
『はい、よろしくおねがいします』
美來は小さく微笑むと、別の用事があるからと他所へ行ってしまい、また來弥と2人になった。
『…悪かったな』
『大丈夫だよ』
『…そうだ、僕と友だちになろうよ』
『…友達?』
『そう、友達』
來弥は人懐っこそうな笑顔をみせ、右手を差し出す。
『…いいよ』
李織は少し考え込んだようにして來弥の右手をとると、
『俺のことは來弥って呼べよ、イオ』
『なら、ライ』
『まぁいいや、これから宜しく』
『うん』
ここから李織は頻繁に遊びに来るようになった。
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