第10話
「良かったんすか?」
「何が?」
車内では、皐月が先程の李織と父親の会話について心配そうな表情を浮かべて運転していた。
「さっきの会話ですよ。前々から思ってたんすけど、李織様って家族に無関心っすよね」
「別に、普通だよ」
車の速度で流れていく景色を窓から見ながら答える。
私にとって、このやり取りは普通であり、今では咲蘭のように接するほうが難しいというか、接し方がわからないといったほうが正しいのだろう。普通の家庭では咲蘭のような関係が普通なのだろうけれど。
「そうっすか…」
皐月は首をすくめるだけで何も言うことはなく、車内は静かなまま、高校に到着した。
「李織様」
「ん?」
「今日も行ってらっしゃいませ」
「うん。行ってくる。じゃあね」
六道家の車が校内につけられると周囲はざわつき、自然と道を開け、私の容姿をジロジロみてはコソコソと話している。いつものことだが、私はその間を堂々と歩いていく。
「李織様、そこは”またね”っすよ」
皐月に背を向けて校内に入っていく李織。李織の段々と小さくなる背中をみて、皐月は今にも泣きそうな顔でそう呟いた。
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