第9話

私は咲蘭を見送り、ご飯を食べ、学校に行こうとかばんを持って玄関に行くと


「李織」


後方から聞き慣れた男性の声が聞こえ、声の主の方を向く。



「はい」


「今日から先週頼んでおいたものをお願いできるか」



話しかけてきたのは父親である。咲蘭と似ている茶髪に茶色の瞳をしており、年も高校生の子供がいるとは思えないほど若くみえる。



「わかりました」


「後それと…」



小さく頭を下げ皐月と家を出ようとする私を引き止める父親。



「はい」



私は父親に淡々と返す。



「……、いや、なんでも無い。行ってきなさい」


「……はい」



私は”行ってきます”と言わないまま、皐月は静かに頭を下げて私の半歩前を歩き、車の前まで先導して高校へと向かった。



李織の父親は、そんな李織を心配そうに見送っていた。

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