第215話 ひとまずの対処

 とりあえず、カナメがいたあの場所に集まる魔力が邪神の力になっているなら、根こそぎ奪いたいよな。


 それにはフェリスたちを活用するのが一番だろう。フェリスたちは、害になる魔力の穢れってやつを除いて魔力を吸収できるみたいだし。


 フェリスたちが魔力を奪えれば、邪神に一矢報いることができて、DPも入手できるという、一石二鳥の策だ。


「よし。フェリスはまた魔力吸収に行ってくれるか?」

『了解みゃあ』


 片手を上げたフェリスの頭をヨシヨシと撫でる。ちゃんとご褒美を考えておくからがんばってくれよー。


『じゃあボクがつれていくね〜』


 影兎シャドウラビがぴょんと跳ねて宣言すると、早速とばかりにフェリスを背負って行こうとする。

 それを俺は慌てて止めた。


 フェリスは戦闘力があまりないし、影兎シャドウラビは強いとはいえ、少し不安が残る。

 やはりエンド並みの戦闘員を一緒に連れて行ってもらわなくては。

 魔力の穢れの問題は、短時間なら問題なさそうだし。


「待て待て。行く時は他にも仲間を連れてけ。んー、エンドは──」

『僕が行く!』


 俺の言葉を遮り、リルが主張する。

 胸を張って、キラキラと輝いた瞳だ。元々戦いたがってたのは知ってるから、リルに任せてもいいんだけど……。


「カナメは放置でいいのか?」


 リルのカナメへの警戒心を考えたら、今回は俺の護衛に徹するだろうと思っていた。

 だから、リルの提案は予想外だ。


『んー。エンドがいるなら、その狐は問題なさそうだし。僕はあの場所を調べてみたいよ。もしかしたら、邪神の痕跡を見つけられるかも!』

「……なるほど? 一理ある」


 カナメがいた地獄の穴に、邪神との繋がりがある可能性は高い。邪神の気配を察知することができたリルが調査してくれるなら、何か新たな発見があるかもしれない。


『でしょ! 僕、がんばるよ』

「エンドもそれでいいか?」

『いいよー。その狐を見張っていたらいいんだね?』


 エンドがチラッとカナメを見て、スッと目を細める。

 その仕草を威圧と受け取ったのか、カナメがビクッと体を震わせて、スイとコウの後ろに隠れた。


「うん、頼んだ」


 苦笑しながら頷く。

 カナメがスイとコウ以外のメンツと打ち解けるのは、邪神との繋がりを完全に絶たないと無理だろう。

 その方法も早めに見つけてやりたい。カナメには邪神への愛情はなさそうだし。利用されてただけだもんな。


『それなら、ボクはフェリスとリルをつれていけばいいんだね〜?』

「ああ、頼んだ」


 影兎シャドウラビは『おまかせあれ〜』と胸元をポンと叩くと、リルとフェリスを影に飲み込み姿を消した。

 そのまま地獄の穴に向かうのだろう。


 俺もその様子を見ておくか。

 立ち上がりかけて、ふとカナメを見下ろす。


 エンドに見つめられて縮こまっているカナメが、ここで何かを企んでしでかすとは思えない。

 できれば仲間にしたいし、おびえてる姿を完全に放置するのはいかがなものか。


「んー……小さいお家、いるか?」

「きゃん(おうち?)」


 きょとんと見上げてくるカナメに「うん」と頷き、本体の方を意識する。

 そして、木偶ドールはその場に置いたままで、本体に意識を戻してタブレット端末を手に取った。


『マスター、何するつもりです?』


 本体の方の護衛をしてくれていた操人形マリオネが、カナメたちを映しているモニターから目を逸らして、俺を胡乱げに見つめた。


「いやー、あの小さい狐が常にエンドに怯えてるのは可哀想だからさ。ちょっとは落ち着ける場所を作ってやろうかと思ってな」


 タブレット端末を操作しながら答える。

 操人形マリオネは『また、マスターはもふもふに甘いんですから……いつかその甘さに足をすくわれますよ』と苦言を呈した。


 その言葉に、俺は「ははっ」と笑う。

 そんなことになったって、操人形マリオネを含めた仲間たちがどうにかしてくれるだろう。だから問題ないさ。


「俺は仲間たちを信頼してるからな。もちろん、操人形マリオネを含めて、だぞ。俺が甘くたって、みんなが気をつけてくれるから大丈夫だ」


 今も油断なくカナメを見張っているエンドしかり、俺の意に反すると理解しながら叱ってくれる操人形マリオネしかり。


 俺の周りには頼りになる仲間が多すぎて、警戒する必要性すら感じない。

 きっと邪神を完全に敵に回したってなんとかなると、俺は信じてるんだぞ。


『そ、それは……もちろんですけど……』


 ちょっと照れた様子で言葉尻を濁した操人形マリオネに、インクやサクが生温い視線を向けている気がする。


『なにをつくってるの〜』


 影兎シャドウラビがひょこひょこと跳ねてタブレット端末を覗きこんだ。

 見えやすいように傾けてやりながら、探し出したアイテムをエンドの山に設置するよう指定する。


「カナメの落ち着ける場所──小さな家だよ」


 質問に答え、再び木偶ドールの方に意識を飛ばす。


 ソッと目蓋を上げると、柵で囲われた空間の端に、豪華版犬小屋のようなものができあがっていた。

 この小屋は、カナメのサイズなら十分に寝泊まりできる広さのものだ。周りからの視線もある程度シャットダウンできるし。


『なんか突然できたんやけど』

『主のお力によるものだろう』


 スイとコウがポカンと口を開けて、小屋とその周りにできた庭(柵の囲い付き)を眺める。


 カナメに中に入るよう勧めたら、警戒した表情を浮かべつつも、吸い込まれるように小屋の中に入り込んだ。

 突然現れた小屋への怖さよりも、エンドの視線の方が嫌だったようだ。


「……きゃん(程よく狭くて居心地がいい)」


 小屋の中で寝転んだカナメをニコニコと眺める。

 寛いでるワンコ(狐だけど)は可愛いなー。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る