第192話 どんどん作成
仮想空間についての大まかな設定を決めた後は、ダンジョン攻略に役立つように、段階的に難度が上がるフィールドを作り上げていく。
最初は洞窟の環境で、これを【チュートリアルエリア1】と名付ける。
そこに出てくる魔物はレベル1から、奥に行くにつれてレベル5まで上がる仕様だ。
最後のボス(レベル5で特殊スキル持ち)を倒したら、クリア報酬の【回復薬】をプレゼント。
回復薬は低DPで出せるわりに、冒険者たちに人気が高いアイテムだから、いい報酬だと思う。
特に、冒険者になりたての人たちは怪我をすることも多いだろうし、売るもよし、怪我に備えて保有しておくのもよし、きっと有効的に使ってくれるだろう。
チュートリアルと言うだけあって、ここで出てくる魔物はウィークポイントに青点が見えるように設定している。
そこを上手く狙えれば、クリティカル評価をされて、大ダメージを負わせることができるのだ。
また、各魔物ごとに対策を立てやすいよう、どんな攻撃が効きやすいかなど、性質やスキルに関する情報を簡単に表示するようにしてある。
魔物を凝視したら、ゲームのウィンドウがポップアップする感じだ。
こうすれば、冒険者なりたての人たちに、戦略を練って魔物と戦う習慣を身につけてもらえるはずだ。
武力だけに頼らず、あらゆる情報を集めて効率的に敵を倒すという習慣は、自分や他者の命を守るだけでなく、きっと冒険者の質向上に繋がるだろう。
それはつまり、冒険者ギルドにとって大きな利点となり、このダンジョンが今よりも活用されていく理由になる。
──なんて、冒険者を育成するようなこと、本来ならダンジョンマスターが考えることではないだろうが、これが俺なのだ。
俺はあくまで、人間たちとの共存共栄を目指しているのだから。
「チュートリアルエリア2は、レベル6から10までで──」
最初のエリア1と同じく洞窟の環境で、出現する魔物のレベルを強化して設定する。
こちらも、ウィークポイントや魔物の性質が見えるようにしてあるのは変わらないが、簡単なトラップが現れるようにした。
トラップについても、起動する前に発見する手がかりの探し方や解除方法、万が一の回避方法などわかるよう、ヒントを仕込んである。
できれば、スキル練習スペースでトラップ対処用のスキルを入手してから、その実践のために利用してほしいけど……まあ、好きなやり方でトラップ対処を学んでくれていい。
エリア2の最後に待ち受けるボス(レベル10で特殊スキル持ち)を倒したら、豪華料理や初心者用のちょっといい武器・防具がランダムで入手できるようにした。
美味い料理で祝勝会をするなり、武器や防具を実際のダンジョン攻略に役立てるなり、上手く使ってほしい。
おそらく、ここを楽々クリアできるようになって初めて、冒険者の入口に立ったという評価になるだろう。
基本的にこの世界では、一般の町人・村人のレベルが10以下で、20程度になるとようやく中堅の冒険者に数えられるかどうかという感じだから。
冒険者なら、レベル10程度の魔物を負傷なく倒せないとな。
「チュートリアルエリア3は密林だな。獣系のモンスターを配置して、素早い敵への対処法を学ばせよう」
『実際のダンジョンの環境に合わせてるんだね』
俺の作業を楽しそうに見守っていたリルが呟いた。
その言葉に俺はニヤリと笑って「そうだよ。さすがリル。ちゃんと気づいたなー」と言いながら、リルの首元をワシワシと撫でた。
リルがブンブンと尻尾を振って喜ぶ。
俺はもふもふで癒されて、リルは俺と触れ合えて嬉しい──なんて素晴らしきWin-Winの関係!
『神殿は作るにゃ?』
俺とリルの戯れには無関心な様子で、ミーシャがジッとモニターを見つめる。
その目は真剣で、俺の考えるチュートリアルエリアに、何か見落としてる欠点がないか、しっかりと考えてくれているのが伝わってきた。
俺のもふもふが、可愛くて頼りがいも満点! 俺はなんて幸せなマスターなんだ……!
「一応、チュートリアルエリア4にもふもふ教の神殿を作る予定だよ。布教できる機会は逃さないようにしないといけないからなぁ」
ちなみに、チュートリアルエリア4では、制限トラップを含む難度高めなトラップへの対処法を学べるようにしてる。
とはいえ、制限トラップは俺でも制御できるもんじゃないから、基本は一部の攻撃方法が使用不可になった場合に、別の攻撃方法を用いる練習ができるエリアだ。
あとは、普段と違う装備・見た目になった状況に慣れられるようにもしてあるけど……これは結構嫌がられそうだな。
そんな詳細についてはともかく。
いい質問をしてくれたミーシャを、ニコニコと笑み崩れるままの顔で撫でようとしたら、迷惑そうに避けられた。
猫らしい機敏さでスルッと離れる仕草もまた可愛らしい。ツンデレにゃんこだー。
『マスターの猫好きがたまに気持ち悪いです』
「うるせぇ、インク。お前は可愛げなんてないから安心しろ」
ボソッと呟いたインクを一言でシャットダウンして、作業に戻る。
……ちょっと言い過ぎた気もするので、あとでフォローしよう。美味しい飯でも用意すればいいかな。
『インク〜、いっしょにおいかけっこする〜?』
『しないです!』
『このちっちゃいモフモフ、すばしっこくておもしろいよ〜。インクもおいかけてみて〜』
『しないって言ってるでしょう! うわっ!?』
モフタマたちと遊んでいた
そして、『よいしょ〜』とインクを倒して、神輿のように担いで運び始める。
インクはなんとか逃れようと暴れてるけど、
みんなで『わっしょい、わっしょい〜♪』と楽しそうだ。
実はインクのこと結構好きだよな、
そして、インクも実は、
……特殊性癖を開拓しちまったか……。
俺が微笑ましく見送ると『マスター、助けて!』という悲鳴が聞こえてきた。
別にモフタマに危険性はないから、そんなに嫌がる必要はないだろ? 追いかけっこはめちゃくちゃ疲れるだろうけど。
「俊敏さを鍛えるいい機会だなー。がんばれ、インク! 動いた後のエネルギー補給用の飯は任せろ。きっといつもより美味く感じるぞ」
『マスターが用意するご飯はいつだって美味しいから、わざわざ運動をして腹を空かせる必要はないんですけど!』
思わぬデレが飛び出して、ちょっと表情を落っことしちゃった。
お前……もふもふじゃない男のデレに需要はないぞ?
でも、期待に応えて、いつも以上に美味い飯を作ってやろうじゃないか。
「……よーし、夕食を作るためにも、早めに仕事を終わらせないとな!」
仲間たちの幸せな笑みを見るために、もうちょっとがんばろう。
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