第193話 祝・完成!

 チュートリアルエリア3・4に続き、暗闇に潜み暗殺を仕掛けてくる敵に対処する練習用のエリア5や単純な身体能力を鍛えられるエリア6などを作成。

 これらのエリアを自由に選択して挑戦できるように設定する。


 そして、ほぼ仮想空間が完成したところで、エクストラエリアの作成に取り掛かった。


『エクストラ?』


 俺が名付けたエリア名を見て、リルが首を傾げる。

 その口にジャーキーを放り込んであげてから、俺は説明を始めた。


「基本的にチュートリアルエリアは、戦闘方法を学ぶ場所だ。つまり、初心者向けで、ダンジョン攻略法の基礎を訓練するエリア」

『うんうん、凄くいっぱいヒントが出るようになってたもんね』


 ジャーキーをカミカミしながら、リルがすぐに頷く。

 ぽけーっと眺めていたようだけど、ちゃんと理解してくれてたんだな。ちょっと意外、と言ったら失礼か? リルは気にしないだろうけど。


「エクストラエリアは、実際のダンジョン同様にヒントは出ない──そして、出てくる魔物のレベルがめちゃくちゃ高い」

『へえー、僕くらい?』


 リルがキラキラと目を輝かせる。

 あわよくば、専用仮想体アバターを用意して、自分が挑んでみようと思っていそうだ。たぶんこの勘は外れてない。


 まあ、そういう使い方も想定してるから、専用仮想体アバターもちゃんと作っておくぞー。

 これで、リルやエンドのストレスが軽減されるはず。

 戦う機会が少ないと、リルたちは目を離した隙にとんでもないことをやらかしそうだからな……予防策を立てておくのは大切だ。


「さすがにリルレベルの魔物ばかりじゃないけど。エクストラエリアへの挑戦を選ぶと、ランダムで対戦相手の魔物が決定して、その魔物に有利な環境で戦うことになる」


 現れる魔物のレベルは25以上、魔物の性質も環境もランダム──事前に対策を立てにくい状況で試されるのは、冒険者たちの真の実力だ。

 命の危機なく自分の限界に挑めるのは、きっと実力をより高めようと考える冒険者たちにとっては、よい環境になるはず。


 クリア報酬にはそれなりにいいアイテムを出す予定だし。

 いくらDPを節約したい状況でも、きちんと頑張っている冒険者たちには相応の褒美を渡さなくては失礼だ。


『そっかぁ。僕ならレベル40以上に固定してほしいけど』

「難度アップを希望かぁ……まあ、それはリル用の特別空間に適用しよう」

『マスター、ありがとう!』


 ぱぁっと輝く目でお礼を言われて、俺はニコニコと微笑んだ。

 どうせリルたち専用の仮想体アバターを作るつもりだったんだし、さらに専用の空間を作るのも大して手間はかからない。

 すでに作っている空間をコピーして、現れる魔物のレベルを調整するだけだからな。


「リルたちも楽しめるようにしたいから、当然だよ」

『むふふー。僕、マスターのこと大好き!』

「俺も、リルのこと好きだぞー」


 相思相愛だな、と微笑み合う俺たちから離れたところで、インクが『もう勘弁してーっ』と悲鳴を上げているのが、凄い温度差を感じる。


 ……ところで、影兎シャドウラビたちから、モフタマを一緒に追いかけようと誘われたはずのインクが、モフタマの大群に追いかけられてるのはなんでだろうな? いつの間に立場が逆転した?


 攻撃力を持たないモフタマにも面白いおもちゃ扱いされてるインクは、さすがというか、なんというか……憐れ。


 それはそうと、シマエナガ風モフタマのエナガが嬉々としてモフタマたちに指示を出して統率してる姿に感心した。

 きっと、もふもふ教支部でふれあい広場を担当するようになっても、その統率力は頼りになるだろう。あとでご褒美をあげなくては。


 モフタマはどういう食べ物が好きかな? うさぎっぽい口だし、野菜とか果物とか?

 色々出して、好みを調査しよう。


◇◆◇


 チュートリアルエリアとエクストラエリアが完成し、作業は終了。

 仮想体アバターの子機(ベッド)がある訓練所への入口は、1階洞窟1に設置した。

 ダンジョンに入ってすぐのところだから、ほぼ戦ったことのない冒険者でも問題なく辿り着けるだろう。


 その実装は明朝に行うことにして、冒険者ギルド宛にお便りを書いておく。

 内容はもちろん、訓練所実装のお知らせとそこでできることの詳細だ。


 いつも通り、お便りをダン街近くに看板を立てて掲示するよう影兎シャドウラビに指示して、夕食作りに取り掛かる。


 影兎シャドウラビたちが久々の役目を『おしごと〜!』と取り合って起きた騒動は割愛させてくれ。毎回のごとく、かけっこ競争になっただけだから。


「肉をたっぷり用意してー、野菜も果物も使おうなー」


 鼻歌を歌いながら調理をする。

 いつの間にか現れていた狼族獣人のロアンナが、真剣な顔でレシピをメモしているのをスルーして、次々に料理を作った。

 ロアンナのことはサクとリルがしっかり監視してるし、俺は気にしなくていいかなって思って。


『マスター、僕、お肉だけでいいよ?』

「なに言ってるんだ、リル。野菜や果物を使うからこそ、肉がより美味くなることだってあるんだぞ? 香草と一緒に煮込んだ肉はリルも好きだろ?」

『ハッ……確かに!』


 ちょっと偏食気味なリルに野菜や果物を食わせようという計画が速攻でバレたけど、リルはめちゃくちゃチョロかった。うん、可愛い。


 基本的に魔物は食事がいらないし、何を食べたところで体調に変化があるわけじゃないんだけど……やっぱ、バランスのいい食事の方が毛艶がよくなる気がするんだよな。

 野菜や果物を食べて、ビタミン・ミネラルを摂ろうぜ!


 ──そんな感じでメイン料理や副菜、デザートまでしっかりと作って、パーティーの開催である。


 リルやミーシャ、エンド、インク、サクなどの名持ちの他に、影兎シャドウラビやモフタマなどのネームレスな魔物たちも招待して、もふもふいっぱいのパーティーだ。


『ふあー! マスター、これ、歯ごたえがある肉がゴロゴロ入ってて、甘みがあって美味しいよー!』


 粗挽き肉の煮込みハンバーグ(肉は豚と牛が混ざったような魔物由来)を食べたリルが歓声を上げるのを、ニコニコと微笑みながら見守った。


「だろー。ソースのコクは、野菜と果物のおかげだよ」

『野菜と果物、すごいね!』


 チョッッッッロ!

 キラキラと目を輝かせるリルに、こんなにチョロくていいのかと少し不安になったけど、こんな感じになるのは俺に対してだけだから、可愛いってことでよしとした。


 他の子たちも各々食事を楽しんでいるようで、幸せな光景が広がっている。


 ちなみにモフタマたちは、見た目に合わせたのか好みがそれぞれ違った。

 リル似の子は肉好きなようだし、ミーシャ似の子は魚料理を美味しそうに食べている。


 エナガはちょっと違っていて、木の実──特に栗がお気に召した様子だけど。

 エンドに勧めて、嫌そうにしてるのを気にせず口に突っ込んでいた。


 まあ、エンドも『……食べられなくはないかも?』と意外そうに栗をパクパクと食べ始めたので、味覚が全く異なるというわけではなさそうだ。


「うーん……癒されるな〜」


 可愛いもふもふたちを眺めて飲む酒は美味い。飲み仲間がいないのはちょっと寂しいけど。


 そろそろ操人形マリオネから連絡が来ないものだろうか。

 こっちから連絡してみるべきかな?


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