第155話 遊び相手確保!

 名付けて『装備取り戻せるかな? レッツチャレンジ館』の設定は完了した。

 ちゃんとクイズを全問正解して辿り着けるゴールに、ドロンとリーエンから奪った装備を返却する宝箱を置いたからな。


「──返却用とは別に、ご褒美の宝箱も設置したし、これでいいだろ」


 全体を確認して、俺は頷く。

 あとはこれを歩夢たちが楽しんでくれるかどうかだけが気がかりだ。つまらなかった、なんて言われたらショックだなぁ。


『マスター、勇者たちの様子を確認しなくていいにゃ?』


 ミーシャがジャーキーをもぐもぐしながら首を傾げる。

 いつの間にそんな美味しそうなものを食べてたんだ……俺も欲しい。


 そう思った直後に、サクからジャーキーなどのおつまみセットとビールを渡された。ニコッと微笑むサク、マジ良妻。


 ジャーキーを口に放り込み、ビールをグビグビと飲む。

 プハーッ。一仕事終えた後のビールは最高だな!


 って、ミーシャに返事をし忘れてた。ちょっと拗ねた顔してる。

 もふもふ撫でて宥めながら、俺は首を傾げた。


「えっと、歩夢たちの様子? 確認する必要あるか?」

『あるにゃ。神官たちが怪しんでないかとか、情報を漏らしてないかとか……気にするべきことはたくさんにゃ!』

『そうだね。念には念を、だよ』

「あー……歩夢のことだから、大丈夫だと思うんだけどなぁ」


 ミーシャは心配性だ。

 苦笑しながらも、ミーシャが俺を心配して言ってくれているのはわかるし、リルにも言われたから動くことにする。


 コネクトを使ってアリーに連絡をとった。

 アリーには歩夢周辺の情報収集を頼んでいたのだ。


「アリー、今話して大丈夫か?」

『大丈夫よ。何かあったかしら?』


 すぐさま返事がくる。

 のんびりとした口調だから、やはり問題は起きていなさそうだ。


「いや、なんか報告が必要なことがあったら聞こうかなー、と思ってな」

『あら、そうなの? 報告といっても、勇者たちが張り切ってダンジョン攻略に乗り出していることくらいしか、言えることはないわよ?』

「え、もう来てんの?」


 ギョッとする。

 慌ててダンジョン内の監視映像をモニターに投影すると、確かに歩夢たちが猛スピードで攻略を進めている姿が映し出された。


「……早くね? 面会予定は三日後って伝えたはず……って、もう二日経ってんじゃん!?」


 日付を確認して固まった。

 面会の予定日が明日に迫ってる。そりゃ、歩夢たちもダンジョン攻略を始めるよな。面会前に4階もふハニトラを確認しておくって言ってたし。


 準備に集中しすぎて時間経過を全然把握してなかった俺が悪い。

 作業の合間に軽食をとってたし、ダンジョンマスターになってから睡眠はあまり必要じゃなくなったから、体内時間がおかしくなってるんだよなぁ。


『マスター、勇者たちがもう来るなら、装備返却施設を公開しちゃえばいいんじゃない?』


 リルに言われて、「そうだな」と頷く。

 まぁ、4階もふハニトラに着いたらすぐに施設に気づくだろうし、看板で説明を書いておけば勝手に攻略を始めるだろ。


 ということで、早速看板を設置。

 4階もふハニトラ下見を兼ねて、装備奪還もがんばってくれ。


『あ、報告を忘れていたことがあったわ』


 作業中も繋げたままだったコネクトを通してアリーの声が聞こえてくる。

 俺が首を傾げたのを見ていたように、すぐさま報告が続いた。


『──勇者たちの突然の行動を怪しんで、神殿側はダンジョン内部まで探りを入れているわよ。それと、マーレ町の上層部も神殿側の動きに見張りをつけているわ』

「うわー……なんか面倒くさいことになってる……」


 思わず遠い目をしてしまった。

 神殿側は勇者の行動を監視して、その神殿の動きをマーレ町の人が追跡してるのか。たぶんそこに冒険者ギルドも絡んでるだろ? ラッカルたちが勇者の監視を依頼されてたはずだし。


 俺のダンジョン内、面倒くさいヤツらが増えてない?

 たぶん大抵のヤツは4階もふハニトラまで来られないだろうから、面会を邪魔されることはないだろうけど。

 ラッカルはちょっと来る可能性あるか……。


『神殿のヤツも中に入ってきてるにゃ?』


 なぜかミーシャが目をキラキラさせていた。

 なんか嫌な予感がして、顔が引き攣る。


「そ、そうみたいだな?」

『じゃあ、そいつらで暇つぶしするにゃー。勇者たちで遊べないなら、それがいいにゃ!』


 ミーシャがそう言った直後に、影兎シャドウラビたちがぴょんぴょんと跳ねて喜んだ。


『あそぶ〜!』

『ギッタギタにする〜』

『ゲシゲシする〜』


 ……はしゃいでる影兎シャドウラビたち、もふもふで可愛いなぁ。

 現実逃避しながら目を細める。


 まぁ、俺が神殿のヤツらを気遣う必要はないわけだし? こっちに不利益が生じないなら、影兎シャドウラビたちの好きにしてくれて構わないな。


「正体バレはダメだぞ」

『わかってるよ〜』

『かくれるのとくいだもん〜』

『あんさつしゃ、かつやくだ〜』


 殺る気満々じゃん。

 元気いっぱいの影兎シャドウラビ、可愛いな! うん。


 早速出かけていった影兎シャドウラビたちを見送り、モニターに視線を向ける。


 歩夢たちがそろそろ3B階密林遺跡の制限区域に辿り着きそうだ。ドロンとリーエンはとても嫌そうな顔をしてる。


 能力制限が嫌なんだな。とんでもない制限がつくこともあるしな。というか、これまでを考えたら普通じゃない制限ばっかりだし、二人が嫌がるのは当然だ。


「……歩夢はすげぇ楽しそうだけど」


 光を放ってるのかと思うくらい、全身から嬉々とした雰囲気を放ってる歩夢を見て、思わず笑ってしまう。

 いろいろあるけど、楽しんでる歩夢を見られて嬉しいよ。


 ほのぼのと和んでいたら、モニターの隅に映っていた他の冒険者が、突然ピコピコハンマーで下半身を強打されて悶絶していた。

 思わず俺も押さえちゃう。見てるだけで痛い痛い痛い!


 ここまで来られてるんだから優秀な冒険者なんだろうけど、その一撃の痛みを受け流すの無理だよな……つーか、これ、影兎シャドウラビたちの仕業では? 姿は見えなかったけど。


『おばかさん、いっぴきくじょ〜』

『ピコピコハンマー、だいかつやく〜』


 影兎シャドウラビたちはコネクトを持っていったらしく、俺に報告をしてくれた。

 続けてアリーから『神殿の手下、一人脱落ね。次もいっちゃいましょ』という声が聞こえてくる。アリーもそこにいたのか。


「あ、そいつが神殿のヤツなんだ?」


 モニターをマジマジと見つめる。

 悶絶して蹲ってるから顔は見えなかった。

 まぁ、神殿のヤツらなら、心置きなくやっちゃえ!


 ……ラッカルらしき見覚えのある冒険者が、大変引き攣った顔でその光景を見ていることには気づかなかったことにする。めっちゃ[もう帰りたい……]って言ってることにも。

 なんかごめんな。


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