第154話 続々・特殊設備作り

 制限トラップゾーンは、最大五つの制限トラップがかけられる迷路にした。もちろん、落とし穴などのトラップもたくさんある。


 精霊などを使ってルート検索できないよう、空間全体に制限をかけているのであしからず。

 前にリーエンが洞窟の迷路をあっさりクリアしたの、ちょっと根に持ってるぞ!


「さて、ここはこれでいいとして、最後はクイズだな」


 制限トラップゾーンをクリアして、待ち受けるのは知力を試すクイズ。

 これの難易度をどうするかが意外と難しい。

 そもそも出題するクイズをこの世界に合わせたものにするか、歩夢だけが答えられる地球の問題にするか……悩みどころだ。


「ドロンやリーエンがクリアできるもの、とすればこの世界の常識とか? ……そんなの、俺が知りてーわっ!」


 思わず叫んだ。

 この世界一年生のほぼひきこもりが問える常識、とは?


『ドロンとリーエンなら、神殿の教義についてのクイズはどうです? それなら、操人形マリオネが多少は調べてきているのでは?』


 影兎シャドウラビたちから解放されたインクが『よいしょ……』と起き上がりながら首を傾げる。

 その頬に砂がついているのは指摘した方がいいんだろうか。影兎シャドウラビに蹴られた跡だよな。


「……神殿の教義かぁ……敵のことクイズにするのは、ちょっと嫌だなぁ……」

『じゃあ、その信仰心を試すのはどうですかー?』


 眉を顰めた俺に、サクが微笑みながら言う。

 ミーシャが『にゃるほど』と頷いた。


『信仰心がない選択をしたら正解ってことだにゃ。マスターと会うに値する人間かを試すという意味でも、いい気がするにゃー』

「絵踏と一緒だな……」


 微妙な気分になるけど、わりと理にかなってる気がする?

 クイズの一つはそれでいいか。

 後は、地球の常識と、俺と歩夢の思い出と、このダンジョンに関する問題にしようかな。


「──なんとなく方向性は見えたな」


 クイズを作るのと同時に、その解答エリアも整備することにした。


 ◯✕で解答する形式のクイズにするつもりだけど、やっぱり答える時にもゲーム性は必要だよな。歩夢に「つまらない」って言われたらちょっと悲しい。

 歩夢は突然こっちの世界に来て苦労してるみたいだから、できる限り楽しんでほしいし。


 クイズでのゲーム性を考えると、間違えた時の罰ゲーム感が大切だ。

 粉まみれとか、泥まみれとか、そういう汚れるタイプが一般的だと思う。


「間違いを選んだ時の罰は何がいいと思う?」

『死に戻りじゃないにゃ?』

「超シビア!」


 キョトンとした表情のミーシャの意見に、思わず叫んでしまった。

 いきなり死に戻りは可哀想じゃね? 最初のゾーンだって、ライフを五個つけてあげてるんだし、それくらいの慈悲は見せようよ。


『何回か間違えても大丈夫にするの?』


 リルも『えー?』と呟く。

 影兎シャドウラビやサク、インクも『マスターは甘い』と言いたげな目をしてるってことは、俺の感覚が間違ってるのか……? 人間と魔物の意識の違いだろうなぁ。


「……一回くらいは間違えてもいいことにしないか?」


 歩夢たちに会った時に、「厳しすぎだろ、お前!」って咎められたくないんだよ。

 まぁ、面白かったか否かの評価の方が手厳しくされそうな気がするけど。


『それくらいは優しくしてやってもいいにゃ。マスターの友だちだしにゃ』


 俺の友だちじゃなかったら、一回のミスも許さなかったのか。

 やっぱりミーシャはシビアだよな。


 とりあえず、ミーシャに許可をもらったので、クイズゾーンのライフを二つに設定する。


 ……つーか、なんで俺はミーシャの許可を必要としてるんだ? 俺がマスターだぞ!

 なんとなく釈然としない気分になったけど、可愛いもふもふは正義だから流そう。


「おっけー。罰はオーソドックスに小麦粉まみれでいいか」


 俺がパパッと決めて設定しようとしたところで、影兎シャドウラビたちが『それってバツなの?』と騒ぎ始めた。

 リルたちも不思議そうにしてる。


 え、小麦粉まみれって普通に嫌だよな? 真っ白になるんだぞ? 汚れたら取れにくいし、鼻とかに入ったらすげームズムズして気持ち悪いと思うんだけど。


『こなよりヌルヌルがいいとおもう〜』

『スライムまみれ〜』

『ふくとけちゃうよ〜』

『からだもとけちゃうかも〜』


 影兎シャドウラビたちが楽しそうにえげつない罰を提案してくる件。

 俺、虚無の表情になってる気がする。


 エルフのスライム漬けかぁ。

 ……年齢制限必要そうなトラップはやめてほしいなぁ! 影兎シャドウラビたちがたくさんいるから、目を塞ぐ手が足りないだろ!


 え、影兎シャドウラビたちはエルフの裸体なんて気にしないって?

 俺が気にするんだよ!


 ──なんて、誰からかもわからない疑問に主張を返して、ブンブンと頭を振る。


 影兎シャドウラビたちの案を受け入れた場合、スライム漬けにされるのはエルフのリーエンだけじゃない。

 歩夢やドロンのスライム漬けなんて、どこに需要があるんだよ……少なくとも、俺は見たくねえっ!


 そんなことをしたら、会った時に冷めた目で見られる予感しかしねぇし……。

 感動の再会をぶち壊すようなことをさせるな。


「スライムはなし!」

『一階のスライムたちの活躍の場を奪うの……?』


 リルが悲しそうな目で俺を見てくる。

 でも、よく考えてみてほしい。一階のスライムたちは、現時点でめちゃくちゃ活躍してくれてるよ? 今さら、こんな罰のために連れてくる必要はないって!


「スライムたちは十分に冒険者の相手をしてくれてる! すでにご褒美を用意しなきゃいけないレベル! よって、今回は連れて来る必要なし!」

『そっかぁ……そうだね。今度スライムたちにご褒美を渡そうね』


 リルは素直に納得してくれた。

 俺がホッと胸を撫で下ろした直後に、影兎シャドウラビがぴょこっと手を上げる。


『スライムたち、マスターとあそびたいっていってたよ〜。ごほうびなら、それがいいとおもう〜』


 今度は俺をスライムまみれにする気か?

 いや、きっと俺の服を溶かすなんてこと、スライムたちはしないんだろうけど。この話の流れで言われると、咄嗟に変な想像をしちゃったよ。


「……そうか。わかった。今度、スライムたちも呼んで食事会でもしような」


 スライムって何を食べるんだろう? イメージだと雑食なんだけど。そもそも味覚はあるのか? つーか、口って……どこ?


 少しばかりスライムの生態に思考を巡らせた。

 よく考えると、スライムって最も謎な生命体な気がする。


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