第256話 さらなる尋問のために
神々たちの傍迷惑でしょうもない争いに巻き込まれたのだと知って、俺はゲッソリした気分でミーシャに抱きつく。
もふもふで癒されなきゃ、もうやってられねぇよぉ……。
『重いにゃ』
「今ばかりは優しさをくれ」
『……肉球触るにゃ?』
「ありがとう」
ミーシャが考える優しさとは、肉球を触らせることらしい。
自分の魅力をきちんと自覚していて素晴らしい。
大型ネコ科の肉球はしっかり硬めな感触で、家猫とは違ったよさがある。なにより、おっきい手がカッコいい!
ミーシャの手をモミモミしつつ、毛皮に顔を埋めて精神の回復をした。
「──よし、回復した!」
『お手軽回復で草』
お前、草って言うのやめてくれないか? すごく馬鹿にされてる気分がするぞ。
ジトッと
俺が現実逃避している間、歩夢たちが鬱憤を晴らすために邪神をタコ殴りにしていたのだが、ちょっとは気が済んだらしい。尋問の再開だ。
……お、邪神の回復速度がちょっと落ちてるみたいだぞ。その調子でがんばれ〜。
つーか、拘束されてる邪神って、もはやほぼ抵抗できない状態だから、もう俺が行ってもいいんじゃね?
歩夢による尋問が一段落したら、リルにお伺いを立てよう。
俺がマスター(上司)のはずなんだけど、立場が弱い気がしてならないけど、人間はもふもふの奴隷なんだからしかたないよな!
[光神──なんちゃらの居場所を教えろ]
歩夢が怖い笑顔で邪神に要求する。
光神の名前、歩夢も忘れたんだな。なかーま。さすが親友。これが類友ってやつだな!
類友ついでに、もふもふ愛仲間にもならねぇかな? ずっと布教してても、その仲間にはなってくれないから、難しいとはわかってるけども。
[なんちゃら、なんて名前ではなく、ラヒティエリアルスじゃ!]
[じゃあ、略してヒス子]
[なんでそうなったのじゃ!?]
怒って訂正した邪神が、歩夢がつけた略称に目をパチクリと瞬かせて驚いてる。歩夢はノリで言ってるだけだと思うぞ。
光神って、ヒス子──ヒステリックな性格なのかなぁ。
うわ、そうだったとしたら、会いたくねぇな。邪神さえ、すごく面倒くさいのに。
[なんとなく。ヒス子の居場所を言う気はあるのか?]
[ない! ワシが容易くニンゲンごときに屈すると思うでないぞ!]
邪神が吠えるような口調で拒否する。
これだけサンドバッグ扱いされて、屈しない邪神って打たれ強い。文字通り。
んー。これ、マジで教えてくれないかもなぁ。
歩夢たちのためにも、ここで情報をもらえると助かるんだけど。
さすがに、勇者には自白剤的な効果のスキルはないらしい。歩夢が今後をどうするか悩む表情を浮かべた。
[そんな時にはこれです!]
タイシがにこやかな表情で沈黙を終わらせた。
さっきまでフェリス(分裂体の一つ)とコソコソ話していたんだけど、いい案があるらしい。
というか、さっきまでタイシと話していたフェリスがいなくなってるような?
[──フェリスから魔力をもらって作りました。超強力自白剤!]
「自白剤あるんかいっ!」
思わずツッコミを入れた。晴れやかな笑顔のタイシを半眼で見つめる。
……そっか。違うタイプの勇者が揃えば、こういうことも可能なわけか。
歩夢は武力チート、タイシはアイテムチートな勇者だもんな。二人がいれば、たいていのことはなんとかなる。
まあ、タイシは魔力が豊富になければ、ほぼ無力になるけど──
って、もしかして、フェリスと話してたのって、それか?
フェリスが空間の魔力を吸収してたくさん増えてたから、吸収した魔力をアイテムに転用させてもらう交渉をしてたのか。
タイシはフェリスの言葉がわからなくても、イエス・ノーくらいならジェスチャーで意思疎通できるもんな。
俺が感心して頷いていると、歩夢がイイ笑顔でタイシから薬液らしきものが入った瓶を受け取った。
自白剤、結構な量があるんだな? 500mlくらいないか? それ全部を一気に飲むだけでも、わりと苦行では?
[飲みやすいように、コーラ味にしてみました。もちろん炭酸入りです]
[なるほど。それはいいことをしたね!]
タイシと歩夢の顔には笑みが浮かんでいるのに、とても怖い。現場にいなくてよかった。
500mlの炭酸を一気飲み……やっぱりしんどいやつだな。
バリウム的なものでもよかった気がするけど。こっちの方がヤバそう。
その場にいるリルたちはというと、尋問に飽きたのか、邪神をバシバシと叩いて遊んでる。威力が結構ヤバくて、邪神の頭がもげそうになってた。
さすがに頭がポロッと取れるのは衝撃映像になるから、手加減してくれよ。
でも、もげた場合に、邪神の頭が蜥蜴の尻尾的な再生式なのか、頭と胴体が別個に生きててくっつけたら戻る方式なのかは、ちょっと気になるかも。
死にはしないだろ、たぶん、きっと。
[ぐえっ……]
[さて、これを飲んでもらうね]
リルに叩かれて呻いたばかりの邪神の胸ぐらを掴み仰向けにさせた歩夢が、瓶を邪神の口に突っ込んだ。
口を閉ざす隙も与えない早業! さすが勇者!
……その容赦のなさに、リルがちょっと憧れの目を向けてるのが、悔しいぞ。
[っ!?]
喋ることも吐き出すこともできずにジタバタと暴れ涙目になっていた邪神の体が、不意にピタリと止まった。
ちゃんとゴクゴク飲めたねー。えらーい。
そろそろ自白剤の効果、出てきたかな?
あ、今のタイミングならリルにお伺いを立てられそうだな!
「リルー、そろそろそっちに行っていいかー?」
『あ、そうだったね。うーん……おっけー!』
こちらを見て、首を傾げて悩んだ後、両手を上げて丸を作ろうとしたリルが可愛い。ただの万歳になってるけど、それがより可愛さが増すポイントだ。
よーし、そっちに行って、たくさん撫でてやるからなー。
俺はニコニコと微笑みながら腰を上げた。
愛しいもふもふに、今、会いに行きます。
『マスター、リルを撫でるためじゃなくて、邪神を殴るために行くんだよにゃ?』
「ハッ、そうだった!」
リルの可愛さにやられた俺に、ミーシャの冷めた目が向けられる。
でも、ニャンコのツンな対応は、俺にとってご褒美だぞ。
もふもふは皆尊し。もふもふ万歳!
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