第257話 現場に到着です

 俺はしっかりサングラスを装備して、遮光ゴーグルをつけたミーシャの可愛さに心の中で悶えながら、尋問現場に到着した。


 移動中も音声は聞いてたんだけど、実際に尋問してるところを見ると、なんとも言えない気分になる。


 とりあえず、リルの横に立って、皆を撫でてもふもふを堪能しながら、尋問を傍観。


「──つまり、ヒス子のいる場所はここと繋がってる、ということでいいね?」

「ああ……ワシたちは争っていると言っても、共に世界を管理しているのだから、意見を交わすためにも、時には会わねばならぬからな……」


 邪神、めっちゃ素直に喋ってる。

 自白剤って凄いんだな。邪神の目が虚ろになってるのが、ちょっと怖いけど。


 それにしても、ここからヒス子のところに行けるのか。

 どこかに道があるってことか?


 キョロキョロと周囲を見回してみるけど、リルたちによる破壊の跡しかわからない。

 ……うん。モニターで見るより、なかなかひどい惨状だと感じる。


『ねえ、マスター、殴らなくていいの?』


 リルがにこやかな口調で聞いてきた。

 その首筋を撫でながら、俺は苦笑する。


「いや、さすがに自白剤でぼんやりしてるところを殴っても、殴りがいがないから、もうちょっと待つよ」

『そっか、どうせならちゃんと〈ぎゃふん〉って言ってほしいもんね!』


 そういう話ではない。あと、別にマジで邪神に『ぎゃふん』と言ってほしいわけではない。それをされたら、もはやギャグじゃん。


「どこから行けるの?」

「ここの地下から行ける……」


 歩夢が尋ねると、邪神がすぐさま答えた。

 邪神以外、全員の視線が下に向く。


 ここ、地下があるのか? 地面が悲惨なことになってるけど、ちゃんと使える状態?


 チラッとリルを見ると、視線を逸らされた。

 しかたなく今度はエンドを見る。『壊す?』と冷静な感じで聞かれた。


 一番最初の提案が破壊なところが、魔物らしいなぁ──なんてほのぼのした俺は、リルたちの行動に慣れてきっている。


 ……うん、最終手段は破壊であることは間違いないけど、まずは行けそうなところを探してみようぜ。


 歩夢が邪神をさらに問い詰めて聞き出した情報を元に、俺は影兎シャドウラビやフェリスに指示を出して、捜索をさせた。

 人海戦術ならぬ、魔物海戦術である。


『どこだどこだ〜』

『ここほれウサウサ、したいな〜』

『ここほれぴょんぴょん、じゃないの〜?』


 影兎シャドウラビたちが楽しそうに駆け回って探してる。


 ここ掘れワンワン、のウサギバージョンを言いたいんだろうけど、ウサギの鳴き声はウサウサでもぴょんぴょんでもないぞ。

 しいていうなら、ブーブーである。でも、これだと豚っぽくなっちゃうな。


『あ、なんかしたにいけるところがありそう〜!』

『ここほれウサウサしないの〜?』

『ここほれぴょんぴょんでしょ〜?』


 発見したらしい。

 その声の主の元へ向かおうとする前に、影兎シャドウラビの集団が勢いよく助走をつけて跳び上がったのが見えた。

 これはもしや──


『『『ここほれウサウサ〜』』』

『『『ここほれぴょんぴょん〜』』』


 影兎シャドウラビの集団によるキックが、地面を割った。


 やっぱりやったかぁ……俺、見つけてくれとしか指示してないんだけどなぁ。

 つーか、ここ掘れって言ってるわりに、自分たちが動いて、しかも蹴ってるのはどうなんだ? 掛け声に意味はない?


 遠い目をしていたら、邪神の尋問を切り上げた歩夢に背中をバシバシと叩かれた。

 現実逃避するなと言いたいらしい。俺の親友、ちょっと厳しくないか?


『マスター、みつけたよ〜』

『なんかウズがある〜』

『ウズウズ〜』

『グルグル〜』


 影兎シャドウラビたちが自分たちで開けた大穴の淵を囲んで観察しながら報告してくれた。


 ウズウズとグルグル──渦? それ、どういうこと?

 不思議に思いながら、歩夢たちと共に影兎シャドウラビのもとまで行く。


 そこにあったのは白と黒の濃い煙のようなものが、穴の底で渦を作っている光景だった。なんだこれ?


「これが、ヒス子のところに行ける場所ってことかな?」

「罠の可能性はねぇか?」


 歩夢がちょっと浮き足立った様子で言うから、一応懸念すべき点を告げた。


 自白剤を飲んだ邪神が教えてくれたんだから、罠の可能性は低いとは思うけど。

 ただし、神なら問題はなくても、それ以外にとっては有害という可能性はなくもない。


 歩夢も少し悩んだ様子だ。

 こういう時にはあれの出番だな。


「──ちゃんと偵察用のアイテムを持ってきたぞ。トリクン二号だ!」


 じゃーん、とドローンのようなアイテムを取り出してみせると、歩夢は「ああ、それが噂の……」と納得した様子を見せる。


 そうだよ。これが邪神に最初の一撃を食らわせたアイテムです。

 ちゃんとセットのモニターも持ってきたぞ。アイテムバッグって便利だなぁ。


 早速、トリクン二号を偵察に向かわせようとしたところで、タイシに肩を叩かれた。


「あの……そろそろ邪神に飲ませた自白剤の効果が切れそうです。回復力は薬物にも適応されたみたいで、想像以上に早くて……」

「あ、そうなんだ? それじゃあ、まずは邪神をぶん殴ろうかな」


 一旦、歩夢にトリクンを預けた。

 歩夢も、俺が邪神を殴るのを待っててくれるっぽい。

 それじゃあ、張り切って殴ろうか。

 突然ダンジョンに連れてこられた恨みを込めて──


 そう気合いを入れて、邪神に向き合った瞬間、目が合った。

 自白剤の効果が切れたらしく、正気が戻った目をしてる。

 なぜか俺を見て、邪神が表情を輝かせた。


「ハッ、おぬしは、ワシが連れてきたダンジョンマスター! このタイミングで来るとは、良い子じゃな! ほれ、早うワシをこの拘束から助け出さんかい! このままでは、ワシらは光神の手下にやられてしまうぞ!」


 ……はぁあ?

 なんか思いっきり誤解されてるみたいなんだけど、それを解くのも面倒くさいし、とりあえず殴っていい?


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