第255話 尋問の時間でーす

 タイシが魔力を使って作り出した拘束具で、邪神が宙に磔にされた。

 それに対し、リルたちが盛大に技を放って、邪神を文字通りボッコボコにしてる。


 邪神はなんらかの能力により、魔力を使って防御したり反撃したりしようとしてるけど、思ったような威力の技が使えないようだ。

 まあ、邪神の周囲の魔力はフェリスが吸収し続けてるからな。みんなグッジョブ。


[ぐっ……どういうことじゃ……お前たち、どうしてこんなに強いんだ……!]


 ボロボロな姿の邪神が驚愕の表情で叫ぶ。

 もはや神としての体面を気にする余裕もなくなったらしい。

 みんなを見る目に怯えが滲んでいた。


[なんでと言われても……俺は勇者だから、としか言えないね]


 歩夢が肩をすくめつつ答える。

 勇者って反則的な能力の持ち主だもんなー。邪神にも効くってのが……うん、ホントに凄いよ。


[はっ!? なぜ勇者がワシを襲うんじゃ! 何かあっても、光神ラヒティエリアルスのところに行くのが筋ってもんじゃろうが!]


 邪神が再び叫んだ。

 なんか知らん名前が出てきたな。

 光神ラヒティエリアルス? 誰だ、それ。


 きょとんとした俺とは違い、歩夢とタイシはすぐにその名前の持ち主がどういう存在であるか察したようだ。

 今までで一番険しい顔になってる。


[……へぇ、いい情報をもらえそうだね]

が光神扱いされてる現状に虫酸が走るのは私だけですかね]

[大丈夫。俺もだよ]


 歩夢とタイシが頷き合う。

 その様子を見て、俺も察した。

 光神──なんちゃら、っていうのは、偽神のことか!


 ごめん。早速名前忘れちゃったよ。仰々しい上に馴染みがない横文字の響きの名前なせいだぞ。

 偽神って名前に改名してくれねぇかな。


『ねえ、つまり、これは闇神ってことでいいの?』


 リルが邪神の頭をベシッと叩きながら聞く。

 邪神は衝撃で舌を噛んだのか、涙目になってジタバタと悶えていた。拘束具のせいで、ほとんど動けてないけど。


「んー、そうなんじゃないか? 光の神がいるなら、それに対する闇の神もいそうだし」


 俺がリルに答えると、それを聞いた歩夢が[言われてみると、コレの自己紹介さえ聞いてないね]と言ってパチリと目を瞬かせる。

 ぶん殴ることに集中してて、基本的な情報を聞き忘れてたな、と俺もハッとした。


「──あー、歩夢、邪神に名前とか聞いてみてくれねぇか? ダンジョンマスターを送り込んでる意味も知りたいな」

[わかったよ。俺も気になるしね]


 歩夢が頷き、邪神に近づくとグッと胸ぐらを掴んだ。カツアゲしようとしてるみたいに見えて、俺は思わず苦笑してしまう。

 でも、取ろうとしてるのが、金じゃなくて情報だというだけで、カツアゲとあまり変わらない状況ではあるよな。


[あんたは闇神ってヤツかな?]

[はあ? なにを、当然のことを聞いてくるんじゃ……知らずに来たのか? ワシは闇神アントゥダラウスじゃぞ! ワシの名を知れたことを光栄に思うがいい!]


 邪神は拘束されて胸ぐらを掴まれながら胸を張る、という器用な仕草をする。偉そうにすることが邪神のアイデンティティなのだろうか。


 それにしても、邪神は闇神──なんちゃらってヤツだったのか。

 ごめん、早速名前忘れたわ。つーか、覚えられなかった。横文字の長い名前って、耳を通り抜けていくよな……。


 もはや邪神って名前が定着しちゃったから、闇神という呼び名さえ違和感がある。

 うん、これからも邪神って呼ぶぞ!


 邪神はその後、聞かれてもないことを得意気にペラペラとしゃべった。


 邪神と光神は、一緒に作った世界を管理していること。


 闇と光、どちらがカッコいいかで言い争いになり、勝敗をつけるために、他の世界から連れてきた魂を使って競っていること。


 邪神はカッコいい闇の体現者として、ダンジョンマスターを使っていること。

 光神はカッコいい光を具現化するために、勇者を生み出していること。


 一時は光神が勝ちそうになっていたが、最近は勢力が衰えてきたようで、五分五分の状態に持ち直せてきていること。


 神としての規則により、他の世界から呼び寄せた魂には、救済策として神への面会が叶うようになっているため、それに向けた準備をしていたこと。

(元々ダンジョンマスターは邪神に、勇者は光神に、直接会って物申せるという決まりがあるらしい)


 そこまで聞いた歩夢が、半眼になって[いや]と呟く。


[俺は、光神とやらに会う方法を知らないんだけど?]

[それはそうじゃろうな。その方法を見つけ出すこと自体を、競い合いゲームの一部にしておるからな。おぬしがどうやってここまで来たのか知らぬが、神違いだったようじゃな!]


 ハッハッハ、と楽しげに笑う邪神を、歩夢が無言でぶん殴る。

 その気持ち、めっちゃわかるよ。自分の人生をゲーム扱いされるのって、気分が悪いよな。ムカついて当然! 俺もぶん殴りたい!

 ……なあ、そろそろそっちに行っていいか?


 でも、話してる間に、邪神が回復してきてるんだよなぁ。

 いつになったら、回復用の魔力が枯渇するのやら……。


『ダンジョンマスターが闇の体現者ってどういうことにゃ? マスターはもふもふ愛が強すぎるだけで、闇な部分はない気がするにゃ。闇というより、もふもふ愛の体現者にゃ』


 ミーシャが不思議そうに呟く。

 うん、それは俺も思った。

 まあ、邪神は、ダンジョンマスターが人間の敵っていうところに、闇の存在としてのロマンを見出してんじゃないかな、と推測できるけど。


 俺はたぶんオーソドックスなダンジョンマスターじゃないもんなぁ。


 つーか、闇と光、どっちがカッコいいかで言い争うなんて、神は厨二病かよ……。

 そんなヤツらに巻き込まれて異世界に来てるなんて考えると、めちゃくちゃ嫌なんだけど!?


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