明かされる真意
戦いは終わり、力尽きて倒れた仁登里は医務室に運ばれた。
「光野さん」
私が名前を呼ぶと、仁登里は寝返りを打つ。
「ああ、皆川さん。私、少し無理をしてしまいました……やっぱり他の人に任せた方が早かったでしょうか?」
本当にそう思っているの?
普通の魔導士と一線を画す能力があるのに、自分に自信が無いふりをする。
「そういえば、質問に答えていませんでした。私が力を抑える理由は……」
とうとうこの時が来た。
仁登里は起き上がった。
「一つの力にこだわり、他を軽んじる人が多かったからです。障気に当てられた人を癒したり、魔力を他の人に渡す役割は、力が弱い人のすることだと考えられていましたから……」
確かに、見習いや弱い人がやらされることだ と思っていた。無意識に、そう思ってしまっていた。
「どの役割も必要とされている。一つでも欠ければ私たちは戦えなくなります。そして、支援役は誰にでも出来ることではありません。簡単なことでは無いのです」
私は仁登里たちに助けられていた。
シンクに攻撃することだけが最前線で戦うということではない。
どの役割だって重要で、誇りを持つべきことだ。
「でも、今日は自分のために力を使ってしまいました。弱いから魔力を渡している訳ではないとわからせたかったのです」
そう言って仁登里は頭をかく。
仁登里は決して弱くない。いや、強い。彼女の技と、組織を支える心には尊敬する。
仁登里が話してくれるたび、昔の自分が壊れる。
「何だか、懐かしい……配属される前のことを思い出す」
私が俯き気味に言葉を発して、仁登里は黙って私を見る。
引き立て役という言葉は前にも聞いたことがある。
———————————
「部隊の紙、張り出されてたねー」
配属される部隊を発表する掲示板から自分の名前を探す。
み……み……あった!
私の名前の欄の上段に、第一光描部隊と書かれていた。
「やったぁ!」
全力を出しきった試験で認められるのは嬉しかった。
その後、同期の子と話していた。
「おめでとう! 私は違う部隊だけど……」
「私、
私は第一光描部隊、羽空ちゃんは
私は人々が輝く昼を、羽空ちゃんは人々が安心して眠れる夜を守る。そうなればよかった。
羽空ちゃんと別れて、他の人にも言いにいこうとした。
皆はどこかな?
私はほめてもらえるかもと期待していた。
「部隊発表、どうだった?」
聞きなれた声だ。私は勢いよくドアを開けてやろうと思った。
「今年、第一光描部隊はぱっとしないよね」
私は固まって、開くことはできなかった。
「葭原さんと足利さんはまあ当然入るよね。有力候補以外の子は……適当に選んだんじゃない? 引き立て役だし」
「どうでもいいや。今年絶対不作だよね」
「試験での映像見る?」
「見ない。どうせぱっとしない、似たような魔法ばっかりでしょ」
私の全力は、ぱっとしない……。
見られることもないんだ。
憧れの部隊に入れたのは、その時の運……。
そんなこと、あってたまるか!
入隊してから、自分は強いと言い聞かせ、戦い続けた。
積極的に攻撃し、経験を積もうとした。けど、良い結果はあまり残せていない。
先輩の戦い方を闇雲に真似しては、自分との違いに愕然とした。
同期の子に追い越されていく。試験の時の自分を追い越せない。
苦しい。だから、仁登里が嫌いだった。何を言われても笑顔を崩さなかった仁登里が……。
私にはいつも余裕がないのに……。
話してしまった。気付いた時にはもう遅かった。
仁登里が心配そうに見上げている。
「ごめん、こんな話……」
「いいえ、押し込めた感情にシンクは付け入ります。これからも、私でよければ聞きますよ」
誰にも言ってこなかった。私が運だけで引き立て役として入ったと言うのは、入れなかった人に失礼だから。本当はわかっていた。自分だけは、自分の実力を認めないと。
「私、皆川さんの魔法好きですよ。他の人の長所も取り入れて、変わっていく魔法」
「ありがとう……あと、
嫌いだと思っていた人が、私を一番理解してくれそうだ。
こんな奇跡もあるんだ。私が主力になる……なんてことがあってもおかしくない。
その時は、支援役が認められるようになっているはずだ。
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