仁登里の本気
霧が晴れ、砂嵐が終わると、中から二体のシンクが現れた。
「嘘!? まだ生き残ってたの!?」
阿賀野さんは顔の前に手を当て、驚いた。
「僕の霧が悪かったんだ……!」
「落ち着いて大夜。あなたの攻撃に異常はなかったよ。単にあのシンクが異常に強いだけ」
頭を抱える酒匂さんを能代さんが宥める。
「面白い……」
矢矧隊長の視線は鋭かった。杖に砂が集まる。
「あたしたちに任せなよっ!」
第一光描部隊の火力代表が建物の上から飛び降りてきた。
「時間をかけずに倒して見せましょう」
色素の薄い長髪の女の人と、肩上に切った黒髪で眼鏡をかけた女の人。
火属性の
火属性は攻撃力が一番高い。
それ以外の特徴はバラバラ。中にはとんでもない弱点を持つ人もいるらしい。攻撃力の高さだけが共通点だ。
「こういうしぶとそうな敵は好きだよ。あたしの炎の餌食になれ!」
葭原さんの手のひらの炎が燃え上がる。
「二つ纏めて抹殺です!」
足利さんが抜刀する。刀身が燃える刀でシンクに斬りかかる。
並んでいたシンクは炎に包まれた。
「ふっ。これでおしまいだね」
「身の程知らずな敵でした」
炎の中から二人が出てきた。
葭原さんは手をはたき、足利さんは刀を戻す。
しかし……。
「この音は何ですか!?」
足利さんが振り返った。
正面を向いていた私は見てしまっていた。
一体、まだ残っていた。
「そんな馬鹿な! 確かに斬ったはず……」
「葭原、足利! すぐに離れろ!」
シンクが二人に腕を振り下ろそうとした。
葭原さんは逃げることが出来たけど、足利さんは茫然と立ち尽くしていた。
もう駄目だと思った時……。
「光野さん!?」
「足利さん、大丈夫です。止めておきますから逃げてください」
仁登里はシンクの大きな手を光のシールドで防いでいた。
足利さんはその場から離れた。
ちょうど増援が来たみたいだ。
六人が固まって走ってきた。
「光野さん!? 何であなたが戦ってるの!?」
増援に来た第二光描部隊の一人が言った。
「このシンクを倒して昇進——とか考えてないでしょうね!?」
「光野さんは支援役っていうか、引き立て役じゃん! 変なこと考えないで魔力を渡してよ!」
「どうせ威力の低い攻撃で時間を取るんでしょ! 待ってられないわ! 今そんなつまらないものを見る気はないの!」
仁登里を良く思っていないらしい。集まった人々からは心無い言葉が次々と出てくる。
「どうします? 今のうちに私たちが……」
「いや、光野に任せろ」
矢矧隊長は足利さんを制止した。
矢矧隊長がそう判断したなら、私たちは逆らわない。
「私だって第一光描部隊の一員です……」
仁登里の魔力が満ちたようだ。仁登里の右手の指輪が光った。
「引き立て役にもならないような人と一緒にしないで!」
強い光を纏った腕でシンクを力一杯殴る。
シンクの魔力と仁登里の魔力がぶつかる。眩しくて目を開けられない。
覆っていた手を下ろし、目を開けると、シンクの白い表面が割れていた。
「なるほど……装甲で身を守っていたのか……一点に集中して攻撃した方が有効ということか」
「隊長、今なら行けます! 弱点が剥き出しになっていますよ!」
気付いた隊長と足利さんがシンクの弱点、真ん中の青い宝石に攻撃する。
何をしても生き残っていたシンクは、あっさり消滅した。
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