第3話「重役出勤」

「北海道に行くのはいいものの、どう行くつもりだ白瀬」

「そんなの決まってます、あらゆる交通手段を使っていくんです」

「そうか、実に理にかなわない、人間味あふれる普通の手段だな」

「何を言いますか、人生は堅実に積み立てる、これ基本です」

「そうか基本を押さえて、暗躍するのだな」

「なぜ暗躍なんですか、もっと適切な言葉があるでしょ」

「そうかな、世界とは野望によって育まれた、そんな盤上だと思ったのだがね」

「ちょっとゲーム思考入ってますね」

「ああ、ゲームは大好きだからね、故に世界もおもちゃ箱だ」

「先生、ひとまず、あまり、理にかなわない、自身の失言はしないでください」

「何を言うか、これでも神経質に答えたのだがね」

「そうですか、それではまるで駄々っ子というか、聞き分けのない、金太郎みたいなものですよ」

「急に昔話を挟むな、イメージが崩壊する、」

「ま、ともかく無関係な事を言わないでくださいという、注釈です」

「そうか、でも金太郎はいい作品だろ」

「そうですね、失言でした」

「ともかく、北海道に行くんだろ」

「ええ、出発ですよ」

「まずは身なりを整えねばな」

「どうします?」

「そうだな、袴で行こうか」

「相変わらず、好きですね、古風な姿」

「私の叔母もね、戦時を知っていた、だからね、親しみを込めてるんだよ、」

「そうですか、では私はスカジャンで行きます」

「え?いや、まーいいんだが、君も結構ラフだよな」

「私は時代を追うものでありながら、最先端のニーズを取り入れるタイプなので、というかファッションですよ」

「そうか、無駄に暑いな、それでも、しかし、いいとは思うぞ」

「ありがとうございます、先生もお似合いですよ」

「そうか、ありがとう、それでは。お手前を見たことだし、行くか」

「ええ、」


そうして二人は玄関を出た。


「先生、寒いですね」

「ああ、まるで南国の世界だ、」

「そこまでは行きませんが、しかし、何か飲みたくなりますね」

「はは、甘いな、白瀬、熱は作れる、走るぞ!」

「いえ、汗は飲めませんからね」

「いや、そういうことは言ってない、変な勘違いするな」

「では、自販機でおでん缶食べますか」

「そうだな、あれなら暖まるだろう、」

「ええ、あのしょっぱいスープも好きなんですよね」

「ああ、塩気は最大の熱量だからな」

「でも先生って、ほんとはおしるこ派ですよね」

「何を言ってる、ドクペ派だよ」

「あーそういうのいいので、」

「あの飲料は幻だったな、」

「そんな悟り開かないないでください」

「うまいものはうまい、これは万国共通の常識だ、故にドクぺを再輸入したい。あー、神よ、なぜ私に、無体な現実を大与えになったのですか、あーあー、アーメーン」

「何、おがんでるんですか、子供がまねするのでやめてください」

「そうだよな、いい大人は、凜々しくなくていかんよな」

「ええ、立身出世、常に自身の腕を振るってください」

「そうだよなー、願いが通じるのは、サンタを信じてる子だけだよな」

「ええ、大人になれば誰もが、夢を見せる側になるので、サンタとか軽々しく言わないでください、」

「そうだね、白瀬、私はもう立派な大人だよな」

「ええ、そうですよ、もっと自己責任持ってくださいね」

「ああ、任せろ、必ずいい大人になる、そして身を固めて、君と生きる」

「え、いや、はい、それは確かに得がたい自己意識ですね、責任感もってくださいね」

「ああ、君を幸せに出来るのは、私だけだ、だからすべて担ってやる、すべて愛してやる、それが私なりの責任意識だ、君と生きるために責任は放棄できない、それだけだ、愛してる」

「ええ、私もです、って、ちょっとオーバーすぎません?」

「はは、自意識が高いからな、それとなく誇大妄想になるのかもな」

「そうですか、でも好きですよ」

「私もだ、」

「では行きましょー自販機探しに」

「おう!」


そして二人は再び道を進む。

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