第7話:溢れる活気
週末を迎えた「花かご」は、朝から賑やかだった。店先には新鮮な花々が並び、いつもより少しだけ鮮やかに見える。千代は早朝から仕入れに出かけ、花たちを丁寧に並べ終えたばかりだ。
ラジオからは軽快な音楽が流れている。曲の合間に挟まれる地元の情報や、リスナーからのリクエストが、どこか心を和ませてくれる。このラジオが店の雰囲気を変えてくれたのだと、千代は実感していた。
「千代さん、今日は朝からいい香りだね。」常連客の一人が、カウンターに顔をのぞかせる。
「ありがとうございます。新しいバラが入ったんです。見ていきませんか?」千代は微笑みながら応える。その声に他のお客さんも耳を傾け、自然と店内の会話が広がっていく。
次々に訪れる客たちで、店内は活気に満ちていた。カップルで来店した若者、プレゼント用の花束を選ぶ男性、日常の彩りを求める主婦。さまざまな人々が、それぞれの理由で花を選んでいく。
「これ、ラジオで聞いた曲ですよね?」
若い女性の一人が話しかけてくる。流れているのはラジオで紹介された新曲だった。
「そうです。ラジオをつけていると、自然と店も明るくなるんですよ。」千代は嬉しそうに答えた。
そんな中、ふと花を手に取る一人の少年が目に入る。母親へのプレゼントだろうか、小さな手で大きな花をそっと選んでいる姿が微笑ましい。
千代は少年の元に歩み寄り、小さなアドバイスを添えた。「こちらのお花は香りがとても良いのよ。きっと喜んでもらえるわ。」
ラジオの音楽が、店内のざわめきと調和しながら流れる。「花かご」はまるで生き物のように賑わい、訪れる人々の心を満たしていく。千代はその光景に、静かな満足感を覚えていた。
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