第3話:すずらんの行方

すずらんは「幸せが訪れる」という花言葉を持つ。千代は、その花が誰に向けられているのか気になって仕方がなかった。だが、光彦のそっけない態度を見る限り、尋ねるのは無粋だろうと自分を戒めた。


翌日、千代は店先の花を整理していると、町の女性たちが談笑しながら通り過ぎていった。

「あの工場の三浦さん、なんだか寡黙で近寄りがたいわよね。」

「そうそう。でも、最近花屋さんに通ってるらしいわよ。」

千代の耳に入ったその話題に、彼女は小さく笑った。やはり、光彦の行動は周囲にも少しだけ注目されているようだった。


その夜、再びラジオの前に座った千代は、ふと思った。「いつか、すずらんの秘密が聞けたらいいわね。」

ラジオから流れる昭和歌謡が、静かな店内に優しく響いていた。

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