悪役令嬢の後日談
聖女の前日譚 1
私の名前はリリアーテ。
幼き頃に私を助けてくださったアンヌマリー様に憧れ、少しでもあの方の側でお役に立ちたいと努力をし続けました。
運命のあの日、私が家に帰って両親にことの顛末を伝えると、顔面が蒼白になりながらも私の無事を喜び、同時にアンヌマリー様を敬愛する心が芽生えたようです。
そんな両親だったので、私があの方の力になりたい。
その為の努力ならば惜しみなくするつもりだと伝えたところ、両親も強く賛同してくれました。
そこで、平民でも目指せる最高峰……アンヌマリー様の侍女の中の1人というポジションを目指そうという話になり、現在貴族のお屋敷でメイドをしている親戚に連絡。
彼女はそれを了承して自分が仕えている貴族、トネーズ子爵家に私を推薦してくださいました。
将来的に別の貴族の元で働きたいという希望を持つ人物を雇うメリットがあるのかというと、実はあるのだそうだ。
推薦を出してその貴族の元で採用されれば繋がりが出来る。
自分よりも上位の貴族と縁を結ぶキッカケになるのだそうだ。
将来的には侯爵家での仕事を望んでいる私は一ヶ月間のお試し期間で雇われた。
この時期に徹底的な貴族のマナー教育を受けて向上心を測るのが目的である。
それは並の努力で賄えるほどに簡単なものではないのだが、私はアンヌマリー様に仕える為に一生懸命に勉強した。
そしていつしか同じ年齢だったお嬢様……フランソワ様のお付きの侍女となり、年齢的にもようやく推薦が受けれるという時であった。
身体に聖女の紋章が浮かび上がり、その使命が発覚したのは。
こうして推薦の話は一旦は中断となり、お嬢様と共に貴族学校に通うことになったのだが、そこで運命とも思える再会を果たすのであった。
人々が道を開けていく中を颯爽と歩いていく人影……アンヌマリー様を見かけたのはまさに奇跡であった。
いや、同じ学校通っているのだから会うだろうというツッコミはあるかもしれない。
でも、それだけ私には運命的な出会いだったのだ。
アンヌマリー様が落としたハンカチを偶々見つけてしまい彼女に届ける……これを運命と言わずに何と言おうか。
「え、ああ、ありがと……う!?」
お優しいアンヌマリー様の事だ。
こんな平民にも優しい言葉をかけてくだされる……と、思ったのだがお礼を言いつつも顔が困惑している。
表情から読み取るに、何故私がここにいるのか。
何故私が落としたハンカチを拾って届けたのか分からないという顔をしています。
気のせいじゃないかって?私が何年アンヌマリー様の事を想っていたと思うのですか!
「ひっ、そうよね……ごめんなさい!」
「ああ、お嬢様でしたか。
申し訳ございません」
「いいのよ、貴女ってばアンヌマリー様の事になると人が変わるから。
それよりもこの学校では主従ではなく、共に学校に通う学友となるのですからお嬢様はやめてちょうだい」
「そうでした、これからよろしくお願いしますね。
フランソワ」
「ええ、よろしくね。
リリー」
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