第5話 堕星


リュカ村を視界に収めた頃、唐突にそれはやってきた。


複数の馬の足音。

馬車の周囲を取り囲まれる。

十中八九盗賊。この世界ではよくあることだ。



「フィーア、俺の近くに」



そう言うとフィーアはぎゅっと俺の体にしがみつく。



「敵は二十を超えておる。中々大所帯な盗賊じゃの。妾の魔法で殲滅するか?」



「んー……でも、せっかくだからここらへんで俺の実力を披露させてもらうよ」



魔力察知。

数は二十三。更に伏兵も十人、街道沿いに潜んでいる。



「フィーア、飛ぶぞ。舌噛むなよ」



「うむっ」



フィーアの返事と同時に外へ飛び出すと飛行魔法を発動し滞空する。

馬車と盗賊達の馬は徐々にスピードを緩めてから停止した。



「お主飛行魔法が使えるのか!?」



「飛ぶのは男のロマンだからね」



そんな軽口を交わしてくると、俺達盗賊です!と自己紹介しているのかと聞きたくなる身なり男達がこちらに近づいてくる。



「おい!空から降りてきやがれ!」



リーダーと思われる男が吠えている。

ということは、魔法も碌に使えないのだろう。

有利を捨てるわけないだろうに。

まあこういう道に落ちるのは、魔法の使えない者が多い。魔法使いは貴重だから職に困ることはないからだ。



「さて、せっかくだから味わってもらうことにしようか」



魔力を練り上げる。ぎゃーぎゃー下から声聞こえるが無視。



「戦火、残響、慟哭、悲しみは終わらず、涙は止まらず、灰となり、空へと帰り、輪廻と帰れ–––––【堕星メテオスォーム】」



その瞬間、空を割り、二つの隕石が出現する。

今回はたいした人数でもないのでだいぶ制限した形だ。



「逃げろぉおおおおおおお!!!!」



リーダーの男が声をかけるがもう遅い。



「いけ」



その号令と共に堕星メテオスォームが目標地点に着弾する。

着弾と同時に大爆発を起こし、爆風と共に整備された街道は見る影もなくなった。

地面は赤く燃え、マグマのようにドロドロと溶けている。



「お、おい?やりすぎでは?街道が使えなくなるぞ?」



「大丈夫大丈夫!戻せばいいんだから」



まあ見ててよ、と断って再度詠唱を開始する。



「女神の腕、抱かれ、回帰せよ–––––【回帰リグレッション】」



術が発動し、壊れた街道が瞬く間に再生していく。



「こ、これは……っ。まさか時を戻しているのか」



「流石フィーアだね、その通り。人の命は死んですぐじゃないと戻せないけどね」



「……いや、ぶっ壊れすぎじゃろ」



なんかドン引きしてない?

そうしている間に街道は再生され、俺達は地面に足をつける。


そしてさっきの術でしれっと再生したリーダー格の男の首根っこを掴んでビンタして起こす。



ぺちんっ!ぺちんっ!ぺちんっ!



「……えぶっ!?い、生きてる?俺、生きてる?」



んだよ。お前が従順なら手間はかからなくて済むんだが、答える意思はあるか?ないならダルマになって魚の餌だけど」



「話すっ!話すよ!!だから乱暴はやめてくれ!なんでも話すからこの通り!!」



綺麗な土下座に日本の心を感じる。懐かしい気持ちになるぜ。



「……お主、本当に容赦ないの」



エルフっ娘のジト目可愛い。

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