第3話 精霊の森へ



結果的に、俺はエルフの少女とパーティを組むことになった。

タイムは無効らしかった。


敗因は、それらしい理由を用意できなかったことにある。

なんでもエルフは女王制をとっており、時期女王は見聞を広めるために人間族の住む場所で暮らし、その中で得た知識や力をエルフの生活に役立てるのだそうだ。


彼女は募集の内容と、バンデスから聞いた俺の話の偏見を無くしたいという部分に共感したとのことだった。


違うんです……結婚したいだけなんです……。



「ふむ、中々に美味い紅茶じゃ。アルメリア、褒めてつかわすぞ!」



「光栄です。フィーア様」



現在、俺とアルメリアとフィーアは優雅なティータイムをしていた。所謂、親睦会のようなものを開いている。


ちなみにアルメリアにフィーアを紹介したときは、完全にゴミを見る目だった。



「まあ、まだパーティメンバーが揃ってないので待機してもらう形になりますですはい……へへへ」



「その商才の感じられぬ商人の喋り方は止めよ。これからパーティになるのじゃ。くだけて話してもらわねばやりずらかろう」



確かに、この三下ムーブは疲れる。



「んじゃ、素で喋るけど怒るなよ?元々マナーなんてのはよくわからないんだ。ずっと戦ってたからな」



「ふふっ……むしろ頼もしい。妾はまだまだ未熟故、ぜひお主の力を借りたいのじゃ。妾もお主にとっての利益になるよう最大限努力しよう」



笑った顔ぎゃわいいいいいいいい(錯乱)

結婚できないってマジ?



「それで、これからの話なんじゃが妾から一つクエストがある」



「クエスト?」



そう聞き返すと、フィーアはクエストの説明をしてくれた。

なんでも、精霊の森のエルフ達が困っていると使役精霊伝にフィーアに相談がきたらしい。

詳細はわからぬものの、作物が荒らされ、このままでは年を越すのも難しくなってしまうということらしい。



「んー、でも精霊の森ってエルフの住む場所の一つだろ?人間は立ち入りできないしなあ……」



働きとうない……。



「それは問題ないのじゃ。こちらの状況は伝えておる。それでも頼みたいとのことじゃ」



あら、優秀。

でもなあ!俺にだってニートの意地があるんだよ!



「だが、人間とエルフの今の関係を考えると、人間の俺が下手に関わることで外交上の問題があるかもなー……ちらっ」



これなら何も言えまい。これなら話が通ったにしてもエルフとの関係を優位に進めたい王国側が騎士団を派遣してくれるかもしれない。



「安心せい。王には妾から精霊を使い連絡をしておいた。“勇者ならオッケー!”とのことじゃ」



あんのクソジジィイイイイイイイイ!!!

めんどくなってそのまんま投げやがったな!!!



「あーでも……なあ……」



何か、何かないか!何か状況を打開する一手は!

そんなことを考えているとフィーアはすすすっと側にやってきて俺の手に自分の手を重ねて体を寄せてきた。



「もし、クエストを受けてくれるのであれば報酬ももちろん、妾がなんでも願いを一つ叶えてやろう……」



「な、なんでも……?」



「そう。なんでも、じゃ」



「ご主人様……」



フィーアは耳元で囁いてくる。

いい匂いがして心はこれでもかとグラついている。

アルメリアからはめちゃくちゃ睨まれているが気にしない。というかもう慣れた。



「し、しょうがないなあ!エルフのみなさんがピンチとあったら助けないわけには行かないし、俺、勇者だしね!

そうと決まったら準備するぞ!久々に本気だしちゃおっかなー!」



「ふふっ……愛い奴じゃの」



「……クズ」



うぉおおおおおおおおおおお!!!

フィーアからのご褒美!なんでもご褒美!


俺は勇者全盛期の頃の殺意100%の装備を整えて、明日、精霊の森に向けてフィーアと共に王国を経つのであった。

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