第2話 エルフの少女
あれから一ヶ月が経った。
いや、時間経つの早すぎだろ。
その合間はアルメリアに膝枕お願いして断られたり、デート申し込んで断られたり、武勇伝を話してる途中で退室されたりしながら過ごしていた。
そうして、念願の日はやってきたのである。
「キリヤ!いいタイミングで来たな!丁度、お前さんとパーティを組みたいってお嬢さんが来てるぞ」
「マジか!どれどれ?!どの娘?!」
周囲をキョロキョロと見渡すと、色んな人間がいる中に一人明らかにオーラの違う女の子が一人ギルド備え付けの椅子に座り、こちらをじっと見ていた。
「あれだよ。多分、お貴族様だぞ。機嫌を損ねないようにしろよ」
バンデスは、あとはよろしく!とばかりに従業員専用の札のかかったドアの中へと逃げていった。
ちょっと……お貴族様とか聞いてないんですけど。厄介なことこの上ないんですけど……。
なぜ、お貴族様が厄介なのかは、異世界転生テンプレと言わんばかりに一癖も二癖もあるタイプが多いのもある。
しかも今回は亜人族の、それもエルフのお貴族様というところだ。
エルフ族とは魔王と戦うための一時的な休戦協定を結んでいる関係性でしかなく、その関係性は魔族の残党の兼ね合いもあってなあなあに続いているのだ。
つまり、手が出せない。
万が一、手を出そうものなら殺られる可能性が高い。
なんなら俺が戦争の火種になっちゃうかもしれない。
「うぉおおお……」
神よ、なぜ俺にこんな試練ををををを……
それでも無視するわけにもいかず、俺はエルフっ娘の座る席の向かい側の席に座る。
なんとかして帰ってもらえないだろうか、切実に。
「なるほど、すさまじいマナの量。お主が勇者で間違いないようじゃな」
席につくや否や、俺の顔のやや上を見ながら呟くエルフっ娘。
高い魔力をもつエルフの特性であり、他者の魔力量を目視で確認できるのだ。
「あははっ……どうも勇者キリヤって言います。お名前を伺っても……?」
「そう畏るな。妾は世界樹の森のフィーアじゃ。これからよろしく頼む」
「……」
そう言って微笑むエルフっ娘。
見た目は小柄な少女。薄い金色の髪、新緑の瞳。流石エルフということもあり容姿は驚くほど整っている。代償に何がとは言わないがぺったんこである。
苦しくも、妄想したままの、いやそれ以上のスペックのエルフっ娘がそこにいた。
「あのーちなみに世界樹の森のって……」
「ああ、人間族には聞き馴染みがなかったじゃろうな。我々エルフは生まれの森を人間で言うところの姓としておる。
世界樹の森はハイエルフの住まう森。つまり、妾はハイエルフじゃ。ちなみに第一王女じゃ」
うわぁああああああああああああ!!!
嫌だぁああああああああああああ!!!
エルフのお姫様だぁああああああ!!!
どんなに可愛くても結婚できないじゃん!
考えろ!断る理由を考えろ!それとなく、当たり障りのない理由で気分を害さない理由を考えろ!
「あの……タイムってできます??」
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