SDカードに残されていた音声データ

「――不法侵入なんてなんでわかるの?」


「第一、アンタたちはサンが除霊してたとき、いなかったじゃない。憶測で言わないでくれる?」


「ターボじじいさん、スーパービッツありがとう。だよね、あの時はサンも怖かったっていうか、あとちょっと塩まくのが遅かったらくびり殺されてたね」


 ネコの鳴き声。


「ネコはいじめてない!!!」


 流れる鈴の音。


「根の葉もないことをいうやつらはたぶん悪霊にりつかれてるんだよね。でも、今ので正気に戻ったでしょ。だからガキはママのベッドで眠ってろよ」


「アンチのコメントなんかどーでもよくて、今日はみんなのお便りを読んで、それを解決していきたいと思いまーす」


 数十秒間の沈黙。


「投稿してくれたのは久護くごいろなさん、もし聞いてくれてたら、ホントにありがとね!」


「その本がこちらにあります。なんだか古い本、うっわくっさあ。黄ばんでるし、表紙なんかなんて書いてるのかもわかんないよ」


「読みにくいなあ……筆記体でさあ、すっごい癖字だよ……。アメリカにいた時だってこんな英語は――ゴホンゴホンっ。今のなしなしっ」


 何かが倒れる音。


 少し離れたところで悲鳴。ネコの威嚇いかくの声。何かが壁へと激突する音。


 ドスンドスンという重量感のある足音。


「あ、あんた望みはなに。金? あ、あたしのからだなら好きにしていいから助け――」


 言葉をさえぎるように絶叫。


 骨の砕ける音、くちゃくちゃという咀嚼そしゃく音、食べ物でいっぱいの口かられているかのようなフハフハという吐息。びちゃびちゃズルズルと液体をすする音が数分続く。


 そして、静寂。


 長い長い静寂。


「アタシがアナタたちのところへ行って、この本を読み聞かせてあげる。だからそこで待っててね?」


「ねえ、なんで? なんでアタシのことを拒絶するの? アタシが頼んでるんだから喜びなさいよ」


「そっか、じゃあ死ねば」


 ぐしゃりと何かをつぶす音とともに音声は途絶えた。

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