4月25日作成のメモ

 編集部で一度顔を合わせたきりの子に相談するのはいささか気が引けたが、相談には乗ってもらえて、非常に助かった。


 だが、私が探しているようなものには心当たりがないそうである。好みの本を探すためだけに世界中をバックパック背負って旅した女傑じょけつが知らないのであれば、だれも知らないだろう。


 ただ、似たようなものかも、という言葉とともに一冊の本を貸していただけることになった。


 その本は日に焼けて、茶色くなった本だ。かなり古い本なのだろう、カバーのない表紙に書かれていた文字はほとんどかすれてしまっていて読むことができない。おそらくはアルファベットなのだろうが……。


 開いてみても、そこにはタイトルも何もない。黄ばんだ紙があるだけ。


 自家出版本だと彼女は言っていたが、タイトルの一つとその作者くらいは書いていてもおかしくはなさそうなのに、それすらなかった。


 さらにページをめくれば、ちんまりとした文字が描きなぐられている。インクの染みが右から左へと流れているようにも、虫がはいずりまわったようにも見えた。よくよく目をらさなければ、文字、それもアルファベットだとはわからないほどの癖字だ。


 それを暗号でも解くかのように読んでいく。


 小さい文字を凝視ぎょうししているせいか、頭が痛くなってきた。


 いや、この本に書いてあるおどろおどろしい物語が、頭の中でうごめき、痛みを生じさせているのか……。


 いや、事実であるわけがない。フィクションに決まってる。


 しかし、確かにこれは私が求めていたものだ。


 この物語に登場する神は、その名を呼ぶだけではなく、その名を見ただけで、いや認識しただけで、認識したものの前に姿を現す――。


 それはつまり、神様を呼びよせる文字。


 そんなものは使ってはいけない。


 書くなんてもってのほかだ。


 だが、この手が動くのを止められない。まるで背後に誰かがいて、私のことをマリオネットのように操っているようではないか。


 そのかみのなは――。






(以下の文章は血にまみれていて読むことができない)

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