第7話 CROSS集結
玲さんについていく形で、CROSS本部の廊下を歩くわたし。
「先に説明した通り、今日……さっそく変身してもらうね。とはいえ、今回は実験的に、だけど。……体調とか、大丈夫そう?」
「は、はい……」
「あの病気の症状も?」
「そうですね。あの時以来、発作はないです……」
「わかった。……じゃあ、大丈夫だね。」
そう玲さんに言われるがままに、わたしはこの前よりも少し奥の方にある、頑丈そうな扉の前に立った。
「……ここが、変身室だよ。」
へ、変身室……
「任務はないけど、変身して実戦訓練をしておきたいときに使う部屋。……まぁ、実を言うと私はあんまり使わないんだけどねぇ。」
「そ、そうですか……」
あの変身体のパワーを閉じ込めておかなきゃいけないのか……頑丈なはずだ。
「でも、色んな設備があって便利な部屋だよ。使い慣れておくと何かと楽だし。」
「は、はい……」
「じゃ、入ろうか。みんなも待ってることだし。」
そう言って玲さんが扉横の機器に社員証をかざすと、
ゴゴゴゴゴ……
重たい音を立てながら扉が開いた。
ガシャン……
開ききったと同時にスタスタと進む玲さん。
「あっ……」
それに続いて、慌ててわたしも変身室へと入っていった……
グォン……
「……うわぁ」
変身室は、やはりというか縦にも横にもかなり広い空間だった。大きく分けて手前と奥の部屋に分かれている。
手前の部屋は、パソコンや配電盤のようのものが沢山置かれている。ここで諸々の調節をするのかな?
そして奥の部屋はアクリルっぽいもので区切られており、サンドバックやラグビー部とかにありそうな人形などが置かれている……恐らくこの中で変身するのだろう。
手前の部屋には机といくつかの椅子が置かれていて……そこに、残りのメンバーたちがいた。
わたしを見つめる3人の人影……
目つきがかっこいいイケメン、いかにも気弱そうな女の人、そして……謎にドヤ顔を決めてる絵那ちゃん。制服のアクセントは順番に緑、水色、黄色だ。いつの間にか絵那ちゃんも制服に着替えていた。
(この人たちが、CROSSのメンバー……)
「あっ……こんにちは。」
まず緊張した面持ちで挨拶をしてきたのはイケメンだ。
「……よ、よ、よろしく、ね……」
次いで、イケメンの隣の女の人が恐る恐る声をかけてくれた。
「(ぴーす)(ドヤァ)(ニコニコ)」
絵那ちゃんは何がしたいんだよ。
「……お待たせ。とりあえず、みんな揃ってるね?えー、エッヘン。聞いてー!彼女が、今回の新メンバー。
玲さんに軽く小突かれるわたし。
「こ、こんにちは、朱音です、みゅうって呼んでください……あの、えーと……よろしくお願いします……」
まばらな拍手。
「……」
何とも言えない空気。みんな遠慮してる。
「……ほら、みんなも自己紹介して!」
玲さんの檄で、ようやく座っていたメンバーたちが口を開いた。
最初に話しだしたのは、緑のラインが映える制服のイケメン。
「……
俊さんのことは知っていた。玲さんと一緒にyoutubeによく出てる。チャンネルでは玲さんに引っ張られっぱなしだったけど……この何となく頼りない態度を見るに、素で振り回され体質のようだ。
(でも、頼りない姿もそれはそれで『良い』タイプのイケメンなんだよなあ)
「俊は名家連合の筆頭、上岡家の跡継ぎだよ。」
「……ども。」
「こんな感じだけど、けっこう能力は凄くて……仕事人って感じかな!いつかCROSSを引退したら、名家連合会長の座が約束されている大物だよ……今のうちに色々と話しかけておくといいかもね!」
(そういや、現会長も絵那ちゃんのお母さんだったっけ。CROSSからの会長っておいうのはよくあるルートなのか。)
次に喋りだしたのは、俊さんよりももっと頼りなさそうな女の人。
「か、
心晴さん……youtubeにはたまにしか出ないけど、大学4年生らしい。俊さんの妹かな?失礼だけど、とても気弱そうで、あまり戦えそうな人には見えない……
(ていうか髪ボサボサだよ。仮にオシャレに無関心でも、髪くらいはしっかりした方がいいって。)
「心晴は俊の妹、なんだけど……実は朱音さんと同じ、ピンチヒッターなんだ。前も言ったけど跡継ぎが足りなくてさ……でもみんなのために献身的に働いてくれて、いつも助かってるよ!」
「……あは、あはは……」
実にばつが悪そうに苦笑いを浮かべる心晴さん。やっぱりピンチヒッターだったか。
(名家連合的にも、この人に戦わせたくはないんだろうな……)
「絵那でーす。」
「ちゃんとして」
「……はーい。
「……よろしく。」
絵那ちゃんの屈託のない笑顔を見ると、思わずにやけてしまう。ついこの間まで絶縁していたとは思えない。
(上岡家の二人が割と大柄だから、なんかいつも以上に小さく見えるな……)
「絵那ちゃんは……知ってるっぽいね。朱音さんと同じ現役JK!これからのCROSSを長いこと支えてくれる、期待の星だよ!」
「(ぴーす)」
得意げにピースサインをする絵那ちゃん。そういや、心晴さんですら大学4年生だから……絵那ちゃんだけ歳が離れているのか。久しぶりの本家からのメンバーで、期待されているのもうなずける。
「みゅうちゃんわかった?この3人と私が、今のCROSSメンバーだよ。」
よくわかった。しっかりとした玲さん。マイペースな絵那ちゃん。仕事人の俊さん。献身的な心晴さん。良いチームだ。けど……
「……すみません。」
「ん?どうしたの朱音さん?」
「た、確か名家連合って、もっと居ましたよね……?」
そう。名家連合は四つの家から成っていたはずだ。上岡、竹下、横嶺、あと一つは……
「あぁ、『中崎』のこと?」
「?」
今、心晴さんが驚いたような素振りを見せた気がしたんだけど……気のせいかな?
「別に滅んだわけじゃないよ~!跡継ぎはいて……今はまだ中学生なんだ。だからこの場にいないだけで。」
「なるほど……」
「でも、結構な有望株だから、近いうちに
「生意気なヤツだけどねえ~」
会話に割り込んでくる絵那ちゃん。まあ中学生なんて生意気なものだろう。
「だからみゅうちゃんも、それまでの間働いていてくれるだけでいいんだ。ざっと……数か月ってところかな。」
「は、はい……」
そんな事情があったのか。サインした時は何年も戦う覚悟でいたけど……結構短い期間で済みそうなのは、ほっとした。
「さて、前置きはこれくらいにして、早速、朱音さんの変身をするよ!みんなも手伝って!」
「わ、わかった。」
「……は、はい……」
「りょーかいっ」
一斉に立ち上がるメンバーたち。一気に緊張した空気が漂う。
(いよいよ……いよいよ始まるのか。)
川添市民防衛戦隊 CROSS by 名家連合 黄緑ドリィ @Kimidori_Dorili
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