足寄「雪の呪い」


足寄町のとある集落では、毎年冬の初雪が降り積もると、村の人々は「雪の鏡」という儀式を行います。この因習は、村の平安を保つためのものでしたが、時として恐ろしい結果を招くこともあったのです。


儀式の日、村の中央にある古い井戸の周りに集まった人々は、白い布をかけた鏡を持ち出します。この鏡は、雪の神が村に降り注ぐ恵みを映し出すと信じられていました。村の長老が鏡を井戸に差し入れると、夜の闇に包まれた井戸の中から、雪の粒子が光を反射し、鏡面が雪のように白く輝きます。


しかし、この儀式には恐るべきルールがありました。鏡が雪の光を反射する間、決して後ろを振り返ってはいけないというものです。その理由は、鏡が「雪の神」の目となるため、その視線から逃れると、神の怒りを買うと言われていたからです。


ある年、若者の一人、健太がこの儀式に参加しました。好奇心からか、彼は鏡が輝く瞬間、後ろを振り返ってしまいました。その瞬間、鏡面が黒く染まり、健太は恐ろしい幻覚を見ました。鏡の中に、彼の姿がなく、代わりに無数の目が彼を見つめていたのです。


その夜から、健太は変わりました。彼は毎夜、夢の中で雪の下に引きずり込まれ、無数の目に監視される悪夢に苛まれました。村人たちは、この現象を「雪の鏡の呪い」と呼び、健太の身に何が起こったかを恐れた。


数日後、健太は行方不明になりました。村人たちが捜索した結果、彼は雪に埋もれた井戸の底で見つかりました。驚くべきことに、彼の体には無数の目が刻印されており、まるで鏡の中で見たものが現実化したかのようでした。


以降、足寄町では「雪の鏡」の儀式は恐れられ、慎重に行われるようになりました。儀式の夜には、参加者は決して振り返らず、鏡が輝く間は静寂を保ちます。鏡が黒く染まった年は、その後必ず村に災いが訪れるとされ、人々は雪の神の怒りを鎮めるために特別な祈りを捧げるのです。


この怪談は、足寄町の「雪の鏡」の因習が裏側に秘める恐ろしさを物語り、自然の力と人間の恐れ、そしてその裏に潜む不可解な現象を象徴しています。

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