美瑛「軟石ウイルス」

美瑛町の静かな田園風景の中、美瑛軟石で作られた古い家々が点在しています。その軟石は、美しい風合いと加工のしやすさで知られ、長い間地元の建築材として愛されてきました。しかし、ある恐ろしい噂が、この軟石にまつわる怪談として広まりました。


物語は、数年前に美瑛で新たに家を建てるために軟石を採掘していた作業員のシゲルから始まります。彼は、採石場で見つけた一枚の特別に美しい軟石を気に入り、自宅の壁に使用しました。しかし、その石が持つ不思議な力に気づくのは、家に引っ越してからしばらく経ってからのことでした。


ある夜、シゲルは新居で初めての深い眠りにつきましたが、夢の中で見たのは、石から這い出る黒い粘液のような物質でした。それが彼の肌に触れると、皮膚が溶け始め、痛みと吐き気が襲ってきました。目が覚めると、それは夢でしたが、翌朝から彼の体調は一変しました。


彼の肌には赤い斑点が現れ、徐々にそれが広がり始めました。医師に診てもらったが、原因は不明とされ、ただ膨れ上がる痛みと、皮膚が腐敗するような感覚だけが彼を苦しめました。寝るたびに、夢の中で同じ軟石から出てくる黒い粘液が彼の体を侵食する恐怖に苛まれ、起きてもその感覚が残るのでした。


友人や家族が訪れると、彼の家からは奇妙な臭いが漂い、シゲル自身も見る影もなくやせ細り、肌は黒ずんでいました。最終的には、病院に運ばれましたが、医師たちも見たことのないウイルスや毒素の影響だとしか言えませんでした。シゲルの体は、まるで石に侵食されるかのように壊死が進行し、彼の最期は見るも無残でした。


その後、シゲルの家は家族により取り壊されましたが、使用されていた軟石は他の建物に再利用されました。すると、再び同じような症状を訴える人が現れ始め、美瑛軟石が持つ「呪い」の噂が広まりました。人々はその石を恐れ、特にその一枚が見つかった家では、夜中にかすかな泣き声や、壁から黒い液体が滲むという報告がなされました。


今でも、美瑛の古い家々を訪れる人々は、この怪談を思い出し、軟石に触れることへの恐怖を感じながら、美しい風景を見るのです。

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