余市「宇宙船のレプリカ」

北海道の余市町にある「余市宇宙記念館-スペース童夢」は、日中は子供から大人まで、宇宙への夢や科学への興味を刺激する場所です。しかし、夜になるとその風景は一変し、静寂と謎に包まれます。


ある晩、宇宙記念館の係員として働くユウキは閉館後の確認作業を行っていました。展示品を一つ一つチェックし、最後に宇宙船のレプリカの内部に入りました。そこは、毛利衛さんの宇宙飛行を記念した展示の一つで、子供たちがよく遊ぶ場所でもありました。


ユウキが内部を点検していると、突然、館内の照明が全て消え、真っ暗闇に包まれました。彼は懐中電灯を持っていませんでしたが、レプリカの窓から漏れる月明かりだけが頼りでした。確認しようと外に出ようとしたその時、異常な静けさの中で、何かが近づいてくる気配を感じました。


振り返ると、そこには人間の形をした影が立っていました。だが、その影は通常の人間よりも背が高く、頭部が異常に大きい。ユウキが恐る恐る声をかけると、その影は何も答えず、彼にゆっくりと近づいてきました。彼が逃げ出そうとすると、影は彼の腕を握り、強い力で止めました。その腕は冷たく、人間ではあり得ないほど硬い感触でした。


ユウキは恐怖のあまり声を出せず、次の瞬間、彼の視界は光に包まれました。意識が遠のく中、見知らぬ言語で何かが話されているように感じました。再び目覚めた時、彼は宇宙記念館の外、雪に覆われた駐車場に倒れていました。


館内には彼が最後にいたレプリカの内部に、誰かの足跡が残されていました。しかし、それはユウキのものではなく、まるで宇宙服を履いた者のような大きな一歩一歩でした。その足跡は館の外まで続き、どこかへ消えていました。


翌日、ユウキは同僚にその夜の出来事を話しましたが、誰もが彼の話を半信半疑でした。しかし、その日以降、彼は宇宙記念館の閉館後、特に宇宙船のレプリカがあるエリアには近寄らなくなりました。また、館内では時折、誰もいないはずの夜間に、奇妙な音や光が見られるとささやかれるようになりました。

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