和寒「キャベツ鬼」
和寒町は雪に覆われた厳しい冬でも、キャベツの収穫が行われることで有名です。しかし、そのキャベツには恐ろしい秘密が隠されていました。
ある厳しい冬の夜、キャベツ農家の野村は、雪の下からキャベツを引き上げる作業をしていました。積雪のせいで、キャベツはまるで氷の下から掘り出すかのようでした。野村は、畑の端に一つだけ特別に大きく、異常なほど黒ずんだキャベツを見つけました。
「これは何だ?」と不思議に思いながらも、野村はそのキャベツを切り取りました。すると、キャベツの中から黒い液体が流れ出しました。それは血のような色で、野村は嫌な予感に襲われました。
その晩、野村の家では奇妙なことが起こり始めました。キャベツの臭いが家中に充満し、夜な夜な庭から不気味な笑い声が聞こえてくるようになったのです。
数日後、野村は再びその黒ずんだキャベツを調べに行きました。すると、キャベツが急速に成長し、まるで何かが中にいるかのように膨れ上がっていました。恐怖を感じながらも、野村はキャベツを切り開きました。
そこから現れたのは、人の形をした、小さな鬼のような生物でした。赤い目、鋭い爪、そして口から覗く牙。それは、伝説に語られるような鬼の姿そのものでした。
「私はこの地の雪と氷の怨念から生まれた」と、鬼は言葉を紡ぎました。「あなたが私を解放したのだ。そして、私はこの地の寒さを愛し、人間を苦しめることこそが私の存在意義だ」。
その日から、野村の家では恐ろしいことが起こり続けました。鬼は夜な夜な現れ、家の周りを徘徊し、家族を恐怖に陥れました。キャベツ畑には、鬼の足跡が雪の上に残り、寒さと共にその存在感を強めていきました。
野村は、地元の古老に相談しました。古老は言いました。「この地には、雪に閉じ込められた怨念が多く、それが時折キャベツを通じて現れる。鬼を封じるには、また雪の下に戻すしかない」。
野村は鬼を捕まえ、再びそのキャベツを埋めました。しかし、鬼は「私はまた戻ってくる」と笑いながら消えました。
その冬が明けると、野村のキャベツ畑では再び普通のキャベツが育ちましたが、冬が来るたびに、鬼の声が聞こえるようになったと言われます。そして、和寒のキャベツ畑では、冬の夜に鬼の出現を恐れ、誰もが夜遅くまで畑に近づかないようになりました。
今でも、和寒の雪に埋もれたキャベツからは、時折恐ろしいものが生まれると、地元の人々はささやき合っています。
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