名寄「喰らうひまわり」
名寄市は、夏になると広大なひまわり畑が咲き誇ることで知られています。しかし、その美しさの裏には恐ろしい話が隠されています。特に、ある一角のひまわり畑は、「喰らうひまわり」の異名で恐れられています。
ある夏の終わり、写真家志望の美里は、ひまわり畑の美しい風景を撮影すべく、名寄のひまわり畑を訪れました。彼女は、特に人気のない一角を選んでカメラを構えました。
「ここは、どこか不思議な雰囲気がある…」と美里は感じながらも、ひまわりの黄色い花びらに包まれる光景をレンズに収めました。だが、突然、ひまわりの花が揺れ始め、風もないのに彼女を取り囲むように動きました。
「何?」と驚きながらも、美里はシャッターを切り続けました。しかし、次第にひまわりの花が大きく口を開け、まるで人間のような口が現れました。ひまわりの中心から伸びる、無数の棘付きの茎が彼女の足に絡みついてきました。
「助けて!」と叫びましたが、声はひまわりの葉で塞がれ、彼女の体は引きずり込まれていきました。ひまわりの花は、美里の体を少しずつ引き裂き、吸収し始めました。彼女の血は土に染み込み、ひまわりの根元を赤く染めました。
その後、美里の姿は誰も見つけることができませんでした。彼女のカメラだけが、ひまわりの真ん中に落ちていたのです。カメラの中には、彼女が最後に撮った、ひまわりの恐ろしい姿が残されていました。
その日から、地元の人々はこのひまわり畑に近づかなくなりました。夏の終わり、ひまわりの花が一番大きくなる時期になると、特にこの一角は異様な雰囲気を漂わせます。夜になると、ひまわりの間から美里のような声が聞こえ、ひまわりの花が揺れるのを見たという者がいます。
そして、時折、行方不明者や訪れた観光客がこのひまわり畑で消えることがあります。翌日には、ひまわりの花が一段と鮮やかに、そして大きく咲き誇っていると言われています。
今でも、名寄の「喰らうひまわり」は、夏の終わりにその恐ろしい本性を見せつけるかのように、美しくも恐ろしい存在として地域の人々に語り継がれています。
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