日本 怪奇蒐集
かなたろー
北海道
稚内「稚内の灯台」
稚内市の最北端、宗谷岬に立つ灯台は、長い間海の安全を守ってきました。しかし、その灯台には暗い秘密が隠されています。
ある夏の夜、若いカップルが灯台を訪れました。彼らは、美しい夕陽を眺めるためにこの場所を選びました。けれども、暗くなるにつれ、風が奇妙な音を立て始めました。
「この音、何だろう?」と彼女が尋ねると、彼は「ただの風だよ」と答えましたが、心の中では何かがおかしいと感じていました。突然、灯台の光が不規則に点滅し始め、二人は驚きました。
「帰ろう」と彼が言ったとき、灯台の周りに小さな影が現れました。見ると、それは子供のようでした。だが、その子供は足がなく、ただ浮かんでいるように見えました。
「助けて」と、子供の声が風に乗って聞こえました。二人は恐怖で身動きが取れず、その声に引き寄せられるように灯台の塔に近づきました。
灯台の中に入ると、急に寒さが増し、古い写真が壁に貼られていました。写真の中には、昔この灯台で働いていたという一家の姿がありました。特に、片足のない子供が、不自然な笑みを浮かべていました。
「私はここでずっと待っているの」と、再び子供の声が響きました。二人は慌てて灯台を出ようとしました。しかし、出口が見つからず、塔の頂上にたどり着いたときには、外は真っ暗で、海は不気味に静まり返っていました。
その夜、二人がどうなったのかは誰も知りません。ただ、時折灯台の光が奇妙に点滅し、風が悲しげな子供の声を運ぶことがあると言われています。そして、灯台の近くで、人影を見たという報告も絶えません。
今でも、宗谷岬の灯台は、海の安全を守る一方で、何か恐ろしいものを隠しているかのように、静かにその存在を主張し続けているのです。
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