第7話 また一撃
何度試しても簡単にスライムを倒せてしまう俺。
配信の方も珍しく【忍者】が活躍しているのと、エリスの容姿に釣られた人たちが観てくれていて、視聴者数は50人を超えていた。
何も無いなら喜んでいるところだが、自分の強さが気になり過ぎてそれどころじゃない。
スライムはおろか、小鬼型モンスターゴブリンさえもあっさり葬れるほどだ。
まぁスライムとゴブリンはさほど強さは変わらないけれど。
それでも冒険初日から単独でゴブリンを単独で倒したなんて話は聞いたことがない。
”おいおいゴブリンも楽勝かよ”
”忍者がなんでこんなに強いんだよ”
”こんな強い忍者なんて聞いたことない”
”エリスちゃん可愛い”
ちなみにこれは関係のない話ではあるが、エリスに動画のコメント欄のことを伝えてやると、まんざらでもないような顔をしていた。
それからコメント欄が気になるのか、チラチラと視線をそちらに向けている。
「この調子ならレベルアップも早そうだな。もう3ぐらいはいっているかもな」
「そんなに早く上がるものか?」
「本来なら数人で時間をかけてモンスターを倒すものだ。一匹当たり一秒程度で次々に倒していく英二が異常なのさ」
「なるほど。そういうことか」
一人でモンスターを倒すとレベルの上りも早いようだ。
経験値という概念があるのだが、それを一人占めしているような状態か。
分配するところを一人で回収していたら、そりゃレベルの上りも早いだろうな。
「でもこれ以上奥に行くと敵がグンと強くなる。流石にゴブリン以上は一人じゃ無理だろうな」
「俺の快進撃もここまでか。ま、今日のところは大人しくこの辺りで帰るとするよ」
時間はそんなに経っていないが、チャンネル登録者数も少し増えたし今日の冒険は終わりでいいだろう。
俺はそう考えていたのだが……コメント欄が騒ぎ立てていた。
”こんないいところで終わりかよ”
”忍者の活躍もっと見せてくれよ”
”エリスちゃんチャンネル登録したよ”
「おい、チャンネル登録してくれたみたいだぞ。この場合どうすればいいんだ?」
「え? ああ、お礼でも言っておいたらいいんじゃないかな」
エリスはコメントにしっかり反応し、俺にやるべきことを訪ねてきた。
そして素直に忠実に純粋に、俺が言ったことをやってのける。
「チャンネル登録ありがとう。これからもっと面白い配信をしていくからドンドン登録してくれ」
”俺も登録した!”
”登録してなかったけどした”
”俺はすでに登録していた”
エリスは真顔ではあるがどこか楽しんでいるように見える。
俺よりは配信者に向いているのかも。
ってこれだけ美人だし、面白みも無い俺みたいな男より人気があって顔出しが向いているのは当たり前か。
ある意味で現実を思い知るも、だがエリスは自分のチャンネルに出てくれる協力者だ。ここは率直に喜んでおくとしよう。
「英二。皆はここで終わってほしくないらしいが……どうする?」
「どうするって言ってもな」
装備の関係でまだ奥に進むのを躊躇していたが……配信のいい流れを切るのも勿体ない。
最初が肝心ってのもあるだろうし、ここは頑張って奥に行ってみるか?
エリスもいるし、おそらくは大丈夫であろう。
俺はそう判断し、そしてエリスとドローンに向けて口を開く。
「皆が求めてるなら奥に行ってみるか」
「その答えを待っていた。皆も喜んでくれるはずだ」
さっきまで配信に興味無い顔をしていたのに、今はもういっぱしの配信者顔。
もしかしたらエリスの天性なのかもね。
コメント欄も喜びを爆発させており、いい判断をしたと自画自賛しておく。
「でも気を付けろよ。出来る限り私が守ってやるが、どうしようもないと思ったらすぐに逃げろ。私が敵を抑えてやる」
「そんな……そうなったらエリスはどうなるんだ?」
「ふっ、私を見くびってもらっては困る。こう見えて私のレベルは11だ。この階層に出てくるモンスター程度には負けはしないさ」
それは俺に言った言葉だったのだろうか。
半分はそうだろうが、しかしもう半分は視聴者に向けての言葉だったと思う。
エリスが言ったことにコメント欄も反応をしていた。
”レベル11!”
”素晴らしいレベルだ”
”11って強いの?”
”エリスちゃんが可愛いしどっちでもよくない?”
”エリスちゃんが可愛いのは納得しかないがレベル11は中々だぞ”
”ほとんどが一階層でリタイアしてるからな”
”レベル10以上って二階層にアタックできるレベル帯だよな”
エリスはコメントが嬉しいのか、耳元をピクピクさせている。
表情に変化は無いが分かりやすい反応をしていた。
俺はそんなエリスと配信が微笑ましく、笑顔を作って『ダンジョン』の奧を目指すことに。
スライムとゴブリンを倒しながら先へ行くと……新しいモンスターが出現した。
「ワイルドボアだ。あれは動きが激しいから倒しにくいぞ」
「あ、ああ……とりあえずは出来る限りやってみる」
今度は最初からエリスのサポート付きだ。
敵は猪を大きくしたようなモンスター、ワイルドボア。
ワイルドボアは前に出たエリスに向かって突進を始める。
「英二。ワイルドボアを側面から攻撃するんだ」
「分かった!」
走るワイルドボア。
直進のみをする相手の横を取るのは簡単であった。
エリスがワイルドボアの攻撃を避けたタイミングで、俺は飛びかかる。
そして一閃。
ワイルドボアの体が真っ二つとなる。
まるで機械で肉を捌くように、抵抗なくあっさりと。
「いや、だからなんで一撃で倒せるんだ?」
”ありえねえwww”
”あんな忍者聞いたことねえよwww”
エリスもコメントも唖然としたものばかり。
流石にここまできたら自分でも笑わずにはいられない。
本当、どうなってるんだ俺?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます