シャゲダンマスター花岡 違法トーナメント編

海老原・F・タイセイ

一戦目 花岡ユズ生誕秘話

「ああ、なんて綺麗な手…」


花岡ユズはごく普通の一般家庭で生まれた。

しかし、家には隠された秘密がある。

花岡ユズが15歳になって始めて明かされることが許される。

所謂。しきたりである。


「この子ならシャゲダンマスターにだってなれる…」


ユズの母は期待の眼差しを向ける。

しかし、この家では未だに男尊女卑が根付いていた。

女を産むという行為は避難の対象である。


その理由、花岡家は一般家庭ではあるが、シャゲダンマスターの称号を許された唯一無二の家庭なのである。

ユズが生まれた当時、跡継ぎが居ない花岡家は新生児の性別に特に気を使っていた。



「馬鹿者!なぜ女なんぞを産む!」

ベシンッ


「申し訳ありませんお父様…でもこの子…ユズの指をご覧になってください、この細くて綺麗な手指…。これならシャゲダンマスターにだって… 」

ベシンッ


「黙れ!捨ててこい!!」



こうして花岡ユズは花岡家の分家へと移され、本人には決して養子であることがバレぬよう、幸せに暮らしていた。




しかし……花岡ユズの運命は変わる。



本日、花岡ユズの誕生日には様々なゲストが招待された。中学校の友人や花岡家の中でも分家由来の親戚達。

ユズの15歳の誕生祝いと高校入学を記念しての特別な誕生会である。


「花岡さん、お誕生日おめでとう!」

「これ、私達からなんだけど…ユズちゃんってゲーム好きだったでしょう?」


友人たちはプレゼントとして新型ゲーム機をユズに贈ってくれたのだ。


「あ…ありがとう…!」



こうして、ユズの誕生会はいつも通り幸せに包まれて終わった。


と、思いきや…


ボンッ!



そこに現れたのは花岡家本家の当主の息子であった。

血だらけの彼を見てユズは後退りする。当然である。物心着く前から養子に出されていたユズにはこの男の記憶などまるでない。



  「この手紙を…ユズ様に…ッッッ」



すると、ユズの義父が口走る。

「やめろ!やめろやめろやめろ!うちの娘になにをッッッ!!」


しかし、何かを察したユズは手紙を受け取り読み上げる。



ユズ。誕生日おめでとう。

隠していた訳ではありません。

あなたの本当の母親は私です。

あなたに伝えなければならないことがあります。

同封のビデオをご覧になってください。

騙していたようになってしまってごめんなさい。


そして、さようなら。



彼女は困惑しながらもビデオを再生した。




ブーン…プツーッ



画面にはユズと同じ髪色の女性が映っている。

間違いない、これは私の母だ。


『ユズ、お誕生日おめでとう。あなたに伝えなければならないこと、それは…』


『あなたは”シャゲダンマスター”の資格があるのです。』


そこでビデオが暗転し、先程の女性の悲鳴が聞こえる。




そう、彼女こそが「シャゲダンマスター」だったのだ…。

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