第5話 夜の魔女の独占
閉じ込められた。
友達を呼んだ次の日から、夜は内側からドアが開かなくなった。
まあ、一度帰ればそんなに出て行く用事もないし、花菜がどこに何しにいくかを、独り言でつぶやけば開くのだから、明確に閉じ込められたとは言えないだろう。
その友達は花菜と会うと、ウットリと見つめてくるようになったが、何もなかったと信じたい。
夜の魔女にとって、相当ショッキングな事があった故の閉じ込めなのだ。可愛いじゃないかと花菜は思っている。
そして金曜の夜。
「しもた。酒の足らん……」
同居人との生活にも慣れてきた。警戒する気持ちはもう無くなってきた花菜。ベロベロに酔いつぶれても構わないとさえ思っている。そのためにはお酒がいるのだが。
ガチャリと玄関の鍵が開く音がして、そちらを見ると、エコバックが玄関に落ちている。以心伝心。
「よし、まだくつろいでないのが幸いや、コンビニでビールでも買ってくるか。お、ちょうど袋も落ちとるし」
コンビニに向かいながら、花菜はこの先のことを考えた。
どんな経緯で自分に目を付けたのかは分からない。
襲ってこないのは、何か縛りがあるのか、純粋に花菜への好意だけなのか。確認するためには、花菜が夜の魔女を認識している事を知らさなければならないのだろうとは分かっている。
色々お世話してもらっているし、無理やり認識させる方法もとれるはずがして来ない。
「純粋に好かれとる、と思いたいけどな……」
「ウチ、花菜のこと好きやで?」
「おわっ!びっくりした~」
いつの間にか例の友達が後ろに来ている事に気付かなかった。
「花菜~、こんな時間に不良やなぁ」
「不良って……ビール切れたから買いに行くだけや」
「ふーん。なぁ、今日はウチで飲まん?」
この友達の家には、ワインやらチーズやら、花菜の好みの物がたくさんあったはずだ。魅力的なお誘い。
「あ~、今日はやめとく。……待たせてるからな」
「お客さんでも来てんの?」
「なんというか。住んでる?」
「え!?」
「可愛いのがね、待ってるねん。じゃ、そういうことでまたな!」
「ただいま~」
おかえり……カナ
「や~危なく捕まるところやった!惜しい気もするけど、やっぱり自分ちが一番や」
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