第6話 夜の魔女と接近

 花菜の視線の先には、女の子が倒れている。

 白いセーターを着て、紺色のミニスカートから伸びる足には、これも紺色のニーハイ。真っ黒な髪の毛はツインの三つ編み。全体的に地味な格好だ。そしてややうつ伏せの顔は、まだ高校生くらいの大人しそうな少女。

「夜の魔女、やんな……これ」


 何が起こったのか。

 コンビニから戻って、ポテチとかお菓子をつまみに飲む花菜。自慢できる食生活ではない、自分が一番分かっている。

 いい感じで酔ってきて、少し寂しくなってきた。

「あ~話に乗っとくんやった。せっかくの金曜やのに、お菓子で独り呑みはちょっと寂しいな……でもあいつ、酔っぱらったらエッチな事狙ってるみたいやし」

 まだノーマルでいたい。

 花菜はふと何か思いついてコタツからでると、キッチンからコップを2つ持ってきた。

「……こうしたら、誰かと飲んでるみたいで楽しくなるかもしれん」

 花菜は二つのコップにビールを注いだ。いつもは缶直だが、たまにはコップも良いだろう。こんな時のためにおしゃれなコップもペアで買ってあるのだし。

 俄然楽しくなってきた。

 スナック菓子も「パーティー明け」して、危ない警察ドラマの気軽すぎる発砲シーンを見て、楽しくなってくる。

 次のディスクに入れ替えようとしたとき、それに気が付いた。

 コップのビールが減っている。

 コタツの隣の辺の床に誰か寝てる。


 酔いは覚めた。

 見れば見るほど普通の女の子だ。結構可愛い。

 花菜はテーブルの上のコップが倒れないように動かして、毛布を魔女の肩に掛けてやると、風呂に行った。

「やばいな……見てしもた」

 これからは彼女の声に、あの姿がイメージされるのだろう。……悪くない。

 さっきまでは、夜の魔女は恐ろしい化け物のような容姿で、花菜を襲おうとしているのかもしれないと、まだ少し警戒していたのだが、これで完全に警戒が解けてしまった。

 風呂から出ると、夜の魔女はいなかった。

 時間はもう深夜。今夜は飲み直すことは止めて素直に布団に入る。

「おやすみ~」


 花菜が目を閉じてしばらくすると、布団の中に誰か・・・が入ってくる感触がした。

 慣れない飲酒で震えているようなその子を、花菜は少し抱きしめて寝るのだった。

 

 

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