第4話 夜の魔女のジェラシー

「あれぇ、爪切りどこへやったっけ」

 わざとらしい花菜の独り言に、爪切りが突如空中に現れた。


 カナ……夜に爪を切るのあまり良くないらしいよ……


 (ほな、いつ切るねん。ま、部屋の中では当然出てくるか……)

「あ、そうやった。ポスト見て来んと」

 これは嘘だ。


 カナ、そんな格好で外出ちゃダメ……


 確かに、誰かに見られたら不味い格好だろう。アパートの伝説になるのは確定。花菜としてはすぐ戻ってくるつもりなのだ、数秒で。

 廊下に出て、気づく・・・

「あ、ポストの鍵忘れてしもた」

 独り言。

 さっきの流れでいけば、鍵がポンッと現れそうだったが、十秒待っても何も起こらない。

「やっぱり……。職場までは流石に来おへんのは確定やったけど、ホンマに部屋だけなんや……寒!」

 下着姿の痴女は急いで部屋に戻った。


 カナ、震えてるよ……寒かったね

 

 (後は……)


「お邪魔します……」

「邪魔すんやったら……」

「前のアパートよりも狭いのかな?花菜だけに!」

「おもろないわ~」

 今日は普通の時間に帰ってきた花菜。ただし友人付き。

 夜の魔女の活動時間に、自分以外の人間がいても出てくるのだろうか?これは実験だ。

「さあ!ヤろうか、花菜!」

「はぁ?」

「え?だって花菜がウチを部屋に入れるって事は……ちゃうの?」

「いつからそんな事になってるねん」

「昨日も、下着で廊下歩いてたやん?てっきり溜まってるんかと思っとった」

「何で知ってるんや怖いわ。……ま、先ずは飲んでからや」

「先ず!」

 夜の魔女は声を掛けては来ないけど、絶対この部屋にいて、見ているのだから。そのせいでそういう・・・・事も最近できていない。


 適度に酔っ払い、いつ眠ってしまったか分からない、深夜。花菜は目を覚まして上半身を起こした。隣で眠る肩に布団を掛けてやると、ベッドから下りてトイレへ。

「いや~ちょっと盛り上がりすぎたわ~」

 トイレの明かりのせいで、リビングは真っ暗に感じる。二十秒間目を閉じて、暗さに目を慣れさせる。

 

 カナ……


 ヤバい、出てきた。

 目は閉じたままだけど、目の前に何かがいる感覚がある。


 カナ……私がいるんだよ?あんな事しないでよ……私に見せないでよ……


 ひゅっと胸とお尻を、何かが撫でていった。

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