第3話 支配とエクスチェンジ、たまに資材

「なに!?遂に出たか!」


「はいアインズ様!地下聖堂の王クリプトロードが発生と共に骸骨スケルトン死の騎士デス・ナイトなどのアンデッドを支配し蠱棺こひつぎから出ようと模索しております、幸い我々の存在には気付いていないようです。」


「分かった、直ぐにそちらに向かう転移門ゲートを用意してくれ。」


 ワイズの転移門ゲートで蠱棺に入ったアインズは数千の低位・中位アンデッドがひしめき合う光景に感嘆を漏らす。


「おぉ…低レベルモンスター達とはいえこの数のアンデッドがひしめき合う空間は壮観だな、いや今はそれどころでは無いな。地下聖堂の王クリプトロードは…あそこだな。」


 アンデッドを従えたまでは良いが閉じ込められた空間に気付いた地下聖堂の王クリプトロードは魔法で破壊出来ない-正確には地下である為破壊しても壁が続く-壁に困惑していた。


「なんなのだ?この空間は、こんな所から抜け出して我が一刻も早く人間共を蹂躙せねばならぬと言うのに…」


「ほう…生まれたばかりなのにもうそんな事を考えているとは、アンデッドの本能というやつか?」


「何者だ!」


「この空間を作った張本人だよ、さぁ私の支配下に降れ«アンデッド支配»」


 パキィンと甲高い音と共に«アンデッド支配»は抵抗レジストされた


「ふん、こんなもので我を支配出来るとでも?」


「ふむ、一筋縄ではいかないか。ならば抵抗出来なくなるまで弱らせるとしよう」


「やれるものならやってみよ!行け我が下僕達!!«魔法三重化トリプレットマジック獄炎ヘルフレイム»!」


「ほう躊躇せずに最適解の攻撃を放つか、これはますます欲しくなる。とはいえまずは上下関係を教えてやらないとな!《上位転移グレーター・テレポーテーション》」


 地下聖堂の王クリプトロードからの攻撃を避け距離を取ったアインズは魔法職らしく戦いの準備を始める


「んな!どこに逃げた!お前にはプライドは無いのか!!」


 ひしめき合うアンデッドに紛れ込みながらアインズは呟く


「勝つ為ならそんな物必要無いさ《第10位階死者召還サモンアンデッド・10th破滅の王ドゥームロード》行けあいつに魔法を唱える隙を与えるな、《上位炎耐性グレーター・フレイムレジスタンス》・《竜の力ドラゴニックパワー》・《飛行フライ》・《上位幸運グレーターラック》…」


 等々アインズは召還した破滅の王ドゥームロードをけしかけ敵のバフをかける時間を与えないと同時に自分はどんどんとバフを積んでいく。


「それでは行くぞ《上位転移グレーター・テレポーテーション》」


「やっと姿を現したな!クソっ小賢しい!!下僕達よ!このアンデッドの足止めをしろ!!」


 破滅の王ドゥームロードとの戦いで既にかなりの魔力を消費した地下聖堂の王クリプトロードの前に現れアインズが魔法を放つ


「そんな状態でこれが耐えられるか?《魔法三重最強化トリプレットマキシマイズマジック現断リアリティスラッシュ》」


 魔法の中でも最上位の攻撃力を誇る現断リアリティスラッシュが無慈悲に地下聖堂の王クリプトロードの手足を切り落とす。


「ぐぁぁぁ!何だそれは!なんと言う威力だ…!!」


「ふむ、1発で終わりとはバフをかけたのは少々大人げなかったか?」


 そう言いながら地下聖堂の王クリプトロードの支配下にあるアンデッドの攻撃を気にも留めず達磨状態の地下聖堂の王クリプトロードに近付く


「何故だ…我はアンデッドの王になるべくして生まれたはずでは…おかしい、こんなはずでは!」


「《アンデッド支配》」


 散々狂騒していた地下聖堂の王クリプトロードはアインズのスキルで途端に静かになり彼の支配下であったアンデッド達も行動を停止する


「これは…上手くいったかな?返事をしてみろ地下聖堂の王クリプトロード


「はっ深き闇の我が主人アインズ様、忠誠を誓います。」


「よしこれで上位アンデッドの量産も可能となったな、次は上位アンデッドの残骸がユグドラシル金貨になるかどうかの実験だな。という訳で次上位アンデッドが発生したら呼んでくれ」


「畏まりましたアインズ様。」


 戦闘を記録していたワイズにそれだけ伝えるとアインズは地下聖堂の王クリプトロードを連れてナザリックに帰還する


 〜ナザリック内アインズの自室にて〜


(まさか本当に上位アンデッドの発生と支配に成功するなんて…!これはかなり嬉しい成果だぞ!!後は支配下におけるアンデッドの上限とエクスチェンジボックスでの実験だが…)


 などと思慮に耽っていると連れ添わせていた地下聖堂の王クリプトロードから声がかかる


「アインズ様、我…いや私は何をすれば良いのでしょうか。」


「ん?あぁそうだったな、お前色々と実験に付き合ってもらうがそれが終わればまた蠱棺こひつぎに戻ってもらう。蠱棺ではワイズの指示に従う様に」


「仰せのままに。」


「よし、まず最初の実験だが上限レベルの確認だな。今から円形闘技場に向かい俺がモンスターを召還するから…」


 その日は地下聖堂の王クリプトロードと実験を行い満足したアインズはまた支配者としての日々を繰り返す事になる


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「聞いたぞプラチナム殿、アインズ様から今回の計画でかなり賛辞を受け報酬まで貰ったそうではないか。」


「耳が早いなワイズ殿、私としてはアインズ様からの賛辞が1番の報酬なのだがアインズ様は信賞必罰は義務だと仰り貴重なアイテムを下賜してくださった。まさに慈悲深き我らが神よ」


「流石はアインズ様、して何を頂いたのだ?」


大致死グレーター・リーサルの魔法が込められた指輪を頂いたよ、いざという時の保険だな。ワイズ殿も褒美を貰ったのだろう?」


「私はアイテム作製の素材だな、蠱棺内の監視の合間にマジックアイテムを作りたいと思ってな。」


「私達ただの下僕になんと寛大な…アインズ様の為に更に精進せねばな。地下聖堂の王クリプトロードが発生してからというもの、最近は1週間に1度は上位アンデッドが発生していてかなり負の瘴気が溜まっていると言えよう。」


「あぁ、ナザリック程ではないが濃厚な負の瘴気で居心地がとても良…これは…そうこう言ってる間にもまた上位アンデッドが発生したみたいだ。私はアインズ様に連絡を送る、プラチナム殿はカッツェ平野に戻っていてくれ。」


「あぁ、よろしく頼んだ。」


 ワイズが転移門ゲートでプラチナムを送りと同時に上位アンデッド発生の報告を受けたアインズが蠱棺にやってくる


「さて、今日は何がPOPしたのかな?」


「はっ部下からの連絡ですと蒼褪めた乗り手ペイルライダーとの事です

 。」


「ふむ…蒼褪めた乗り手ペイルライダーは既に2体支配出来ているし今日はエクスチェンジボックスの実験にしてしまってもいいかもしれないな、確か蒼褪めた乗り手ペイルライダーのドロップアイテムは"死をもたらす螺旋槍の破片"、"蒼褪めた兜"、"霊馬の炎尾"とかだったか?どれがドロップするか分からんがとりあえず倒すか。」


 散歩にでも行く様な足取りで向かったアインズは10分もしない内に蒼褪めた乗り手ペイルライダーを倒し、落ちたドロップアイテムである"蒼褪めた兜"を広いナザリックに戻る


 〜ナザリック内〜


(しまったな折角倒すんなら"強欲と無欲"を装備しておけば良かった…まぁそれはまた今度でいいか。それより今は…)


「んぉ呼びですかアインズ様っ!パンドラズアクター御身の前に!!」


「あ、あぁ…パンドラズアクターよ音改さんに変身してをエクスチェンジボックスに入れてほしい。」


「ん〜かっしこまりましたアインズ様!それでは失礼して…《変身フォームチェンジ》!」


 至高の41人にしてエクスチェンジボックスの売却ボーナスが付く商人系職業を持つ音改に変身したパンドラズ・アクターはアインズから蒼褪めた乗り手ペイルライダーのドロップアイテムを受け取りエクスチェンジに放り込む


「おぉ!売却ボーナスがあるとは言えドロップアイテム1つで金貨100枚も出てくるとは!小麦を大量生産するより効率が遥かに良いぞ!正直アンデッドやゴーレムはエクスチェンジボックスに入らなかったから不安だったがゴーレムの素材である鉱石が入るのだから杞憂だったな。」


 アインズはエクスチェンジから出た金貨を拾いながら今後について考える


(今の所差し迫った戦力増強の必要性もないから上位アンデッドは倒してしまって金貨にするべきか…?いや上位アンデッドの素材は聖遺物級レリックアイテム作成にも使えるから少し残してもいいか


 まだ支配していないアンデッドは2〜3体被るまで捕まえて、それ以外は素材と売却を3:7の割合で"強欲と無欲"で経験値を貯めつつ集めるとしよう。ふふふ週に1度のペースとはいえ蠱棺は素晴らしい金の成る木だな)


 今後の蠱棺の運用方法を決めたアインズは上機嫌で金貨を回収し、パンドラズ・アクターと蠱棺について話し合うのだった

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