第4話 カッツェ平野での諍い

 カッツェ平野にて今日も今日とてアンデッドを倒し残骸を拾っていると生者の気配が近付いてくるのをプラチナムは感じ取る


「む、また冒険者とやらのアンデッド狩りか?全く…面倒な事だ。」


 回収した低位アンデッドの残骸をワイズに引き渡し、仮称冒険者達から離れる様に狩り場を移動するが冒険者達と距離が離れる様子がなくプラチナムは不審に思う。


「なんだ?野良アンデッドだと勘違いして私達を狙っているのか?面倒だな少し待ってみるか。」


 その場にいた低位アンデッドを狩りながら待っているとガチャガチャとした金属音と共に冒険者らしき人間のチームが姿を現す


「すげーあの噂は本当だったんだな」 「マジでアンデッドがアンデッドを倒してやがる」 「アンデッドが隊列組むとか冗談かよ」


 など色々な雑談をしながらこちらを品定めの目を送る冒険者達に不快感を募らせながらもプラチナムは言葉を放つ


「止まれ、私達は野良アンデッドとは違い生者を攻撃するつもりはない、アンデッドを狩っているだけだ。プラチナムという名を知らないか?」


「よぉ、知っているぜぇ。カッツェ平野に行ったワーカー共がアンデッドを狩っているアンデッドにコテンパンにされて『命は取らないからアンデッドのみを狙うアンデッド、エルダーリッチのプラチナムという名を広めて冒険者どもに攻撃しないよう忠告せよ』って噂を広めさせてるモンスターがいるって教えてくれたよ。」


 そう、プラチナムは度々襲ってくる人間達をアインズの指示により殺さずに負傷させて何度か撃退させていた。


「ふむ、冒険者ではなくワーカーであったか。してそれを知りながら何故私達を狙う?」


「あんたが人を襲わないと自称しても不安がる輩はいるもんでな、ヴァディス自由都市から冒険者ギルドに正式にアンデッド狩りのプラチナムを討伐する依頼が来たんだわ。それもかなりの報酬でな!そんな訳だから大人しく倒されてくれよプラチナムさんよぉ!!」


 そう言うやいなや30人程の冒険者達が臨戦態勢に入る


「大金目的で命を無駄にするとは、なんと哀れな…(アインズ様には正当防衛の場合にのみ殺生を許されていたし)こちらも予定があるので手早く済まそう。


 行け骸骨戦士スケルトンウォリアー、深追いはせず防御に徹しろ。骸骨弓兵スケルトンアーチャー骸骨戦士スケルトンウォリアーに手を出そうとしている者に牽制を、骸骨魔法師スケルトンウィザードは後方の人間に攻撃魔法を、骸骨神官スケルトンプリーストは仲間にバフをかけ続けろ。」


 隊伍しているアンデッド達に指示を出しながら自分も戦闘準備を開始する


「《魔法二重化ツインマジック第5位階死者召還サモン・アンデッド・5th》、重装骸骨戦士ヘビー・スケルトンウォーリアーよ私を守れ。む…流石に私達と戦う事を想定している奴らには低位アンデッド掃討作業用の低位アンデッドでは歯が立たないか。《伝言メッセージ》あぁワイズ殿か?すまないが面倒な事になってな…」


 プラチナムがワイズに連絡を取ってる間に骸骨戦士スケルトンウォリアー達は倒されていく、如何にプラチナムの指示が的確でも流石に対エルダーリッチ戦を想定した人間集団に対人戦を想定していない低位アンデッドの隊伍ではまるで歯が立たなかった。


「よし雑魚共は片付いた、後はエルダーリッチとその取り巻き共だけだ気合い入れろよお前ら!」


「「「おう!!」」」


 少しも力を消耗してない様子の人間達と8体の重装骸骨戦士ヘビースケルトンウォーリアーがぶつかり合う


「くっ!なんだこの骸骨戦士スケルトンウォリアーっ強ぇ!というより攻撃が重い!!」


「流石はエルダーリッチの近衛兵って所か!おいっ神官達は対アンデッド用神聖魔法を!魔法使いは俺達に身体能力向上の魔法を「させる訳なかろう」」


「《魔法三重化トリプレットマジック龍雷ドラゴン・ライトニング》」


「「「ぎゃぁああ!!」」」


「まだだ《魔法三重効果範囲拡大化トリプレットワイデンマジック・《毒霧ポイズンフォッグ》》」


「「「ぐふっ!がはっ…」」」


 たった2回の魔法で30人いた人間は残り15人程になる


「「《魔法効果範囲拡大化ワイデンマジック・《解毒ディトックスケイション》》」」


 生き残った神官が毒を中和する魔法を唱える


「ほう、まだ抗うか。」


「ぐぅ…当たり前だ!俺達はミスリルチーム5組が集まった合同チームだぞ…!エルダーリッチ1体に負けるはずがないんだ!!」


「そうか、ではもう少し私の戦闘訓練の相手をしてくれたまえ。」


「くそっ舐めやがって!行くぞお前ら全力攻撃だ!!うぉぉお!《武技・斬撃》!!」


「《武技・貫通突き》!」


「《魔法最強化マキシマイズマジック衝撃波ショック・ウェーブ》!」


「《退魔エクシザム》!」


「素晴らしい、お前達に敬意を表して私も全力で答えるとしよう…!」


 人間達の攻撃を重装骸骨戦士ヘビースケルトンウォーリアーで防いだり魔法や回避で躱しながらプラチナムは今までにない拮抗した戦闘に感情が高ぶっていた


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「はぁ…はぁ…くそっここまでか…!」


「ふむ、素晴らしい経験が出来た事を心から感謝する。」


 拮抗した戦いは初めこそ人間が押していたが1時間もしない内に疲労をしないプラチナムに軍配が上がっていた


「もはやここまで…さぁ殺せ!」


 ミスリル合同チームの生存者はリーダーの男と神官と近接職の3人だけで、3人とも満身創痍でもはや動く事すら出来そうになかった


「ここでお前達を全滅させたとしてもまたギルド依頼とやらで討伐隊が組まれるのは面倒極まりないな…こちらに敵意が無い事を伝えに行ってしまおうか…?」


 ミスリルチーム自体数が少なく、ヴァディス自由都市の冒険者ギルドに属するほぼ全てのミスリルチームで編隊された合同チームがやられたとなるともはや冒険者ギルドやヴァディス自由都市は手を出す事など出来なかったがプラチナムはそんな事を知る由もなく。


「ちょ、直接…?まさか!お前ヴァディスに行くつもりか!?」


「ヴァディスだか何だか分からないが、これ以上面倒が起きない様お前達の都市に行った方が早いと判断する。という訳で都市までの道案内を宜しく頼んだぞ?」


「誰がアンデッドを都市に案内するか!」


「そう言うと思っていた《人間種魅了チャームパーソン》、さぁ都市までの案内をしてくれるな?」


「あぁ!もちろんさ親友、任せてくれ。」


 目の前でリーダーがエルダーリッチに魅了される所を目撃した人間達は恐ろしさの余り震え怯える


「安心したまえ、お前達は殺さない。無意味な殺生を偉大なるお方は好まれない、慈悲深き主に感謝するがいい。重装骸骨戦士ヘビースケルトンウォーリアーよ人間達を担いで追従して来い。」


 人間のリーダーと生き残った2人は重装骸骨戦士ヘビースケルトンウォーリアーに担がれプラチナムと共にヴァディス自由都市に向かうのであった。





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カッツェ平野を効率良く活用したいNPCの物語 @yukingakakumakuma0804

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