第5話 真面目に生きる。

新聞や、ニュースを見ても、いい話はほとんどない。

悪いニュースばかりだ。

この世界は腐っているのだろうか?

悪いニュースばかり伝えて、新聞社やテレビ業界は、大儲けしているように思える。

でも僕は、今を知りたいから、新聞は毎日読んでいる。

今日、前理事長さんと会って、挨拶をした際に、

「この施設は共産党を押していますよね。読み終えたA新聞を、僕にくれませんか?A新聞は、確か、共産党の機関紙ですよね。」

と、僕が言うと、前理事長は、ニッコリして、カバンから読み終えた、A新聞を取り出す。

「いいよ。大事なことがいっぱい書いてあるからね。あげるよ。」

と言って差し出したのです。

「ありがとうございます。ぜひ、読ましてもらいます。」

僕は、深々と、頭を下げた。

「どうだい。月々、980円で、この新聞は取れるよ。取ってみるかい?」

「いゃー。僕の工賃では、きついです。興味があっても、そこまでは。」

「あー、そうか。じゃぁー。」

前理事長はニッコリして、ゆっくりと、歩いて行った。

僕は後姿を見送る。

この障碍者施設の創始者の後姿は、老いていても、優しくて、楽しそうで、自然の風のようだった。

前理事長さんの顔は、友達Hくんと噂をしているのだが、まるで、インドの、あの、ガンジーのようです。神様のようです。


誰でも、生活管理と、金銭管理と、健康管理に、とても苦労します。ふつうに、当たり前のことです。また、加齢とともに自己コントロールができなくなってきます。

人間は、年齢を重ねると、だんだん、仕事も、人生も、大変になってくるし、人気度は下がってきますね。とかく、おじさん達は、肩身が狭くなってきます。名誉あるおじさんや、子育てや、孫のいる家庭持ちのおじさんならば、僕たち、施設に住む障碍者のおじさん達より、いいかもしれません。


先週、僕は、グループホームの全員が、僕をつけ狙うフーリガンのように思えたので、深夜に、実家の父親に電話して、荷物をまとめて、車で迎えに来てもらって、ふるさとの実家に、帰りました。11年間、ここに住んでいて、初めての事でした。トラブル回避したかったのです。なんだか、全員が僕を付け狙い、僕を落とし入れることが、楽しいのかな…と思ったのです。父親に訳を話して、実家に泊めてもらうことにしました。グループホームが、僕は、怖くなってしまいました。出ていこうにも、実家しか思いつかなかったので、帰ったのです。

これを、被害妄想と言うのでしょうか?施設スタッフに、相談すると、きっと、精神病院に連れていかれます。それは、嫌ですね。

ふるさとには、1週間位帰ろうかと思っていましたが、一晩泊めてもらうと、気持ちが収まり、また、父親が独裁者のように思えたので「僕は父親のペットではない。」と思ったので、千円札を置いて、朝には、すぐ、グループホームに戻り、作業所に行きました。

グループホームのみんなを変えることは、できません。自分が対応するしか、ありません。僕が、キレて、グループホームで大乱闘を起こしたら、僕は、間違いなく、ここを退所して、精神病院に連れていかれるか、または、医療刑務所に入れられてしまいます!冗談ではありません。

以前、ある世話人さんが、僕に、「あんた、精神病院に行くより、刑務所に入ってきたら、どう?ホリエモンが、いい経験だったと言っていたわよ。」なんて、笑いながら、僕に言いました。冗談ではないです。

その世話人さんは、旦那さんが、「大嫌い!」と豪語して、ある時は、「旦那が、死んだら、面白いのに!」なんて、他の世話人さんに、真面目に、言っていました。僕は、なんて酷い世話人さんだなと思いました。そしたら、先月、本当に、旦那さんが、急死してしまいました。今、その世話人さんは、休職して、家に閉じこもっています。

僕たちは、たとえどんな酷い世話人さんでも、僕たちに、温かいご飯を作り、汚れたグループホームの掃除を、ちゃんと、してくれる世話人さんの愛を、よく知っているので、たとえガミガミ言われても、まるで、お母さんのように、僕たちは、思っていました。

実は、僕をはじめ、僕たちは、実の母親を、すでに失くしていた人達が多いグループホームでした。

だから、その世話人さんの復帰を、僕たちは、心から、望んでいます。辞めないで欲しい。僕たちのガミガミ言うおばさん世話人さんでも、お母さんのような世話人さんですから。

どんな仕事でも、たとえ適職でも、大変かと思います。でも、この世話人さんの仕事への復帰を望んでいます。どうか、また楽しいグループホームになることを、僕たちは、成長して、祈っています。

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