第4話 レーゼ
レーゼの男は足から血を流し、路地裏でよろけた。
「うっ………?!!!くそっ!誰だ??」
驚いたような素振りを見せ、慌てて物陰に潜む。
「はぁはぁはぁはぁ………」
ホッとしたのもつかの間、空から爆弾処理を終えたラグナがナイフを振り下ろしながら降りてきた。
「よくやった。ゆら。」
「なっ……!?」
慌ててレーゼの男が避ける。
すると、壁を蹴ってラグナが追撃する。
「チッ…!!」
壁と壁の間が1.5メートルしかないため逃げるのを断念し、レーゼの男も戦闘態勢に入った。
コートの下からナイフを取り出す。
――――キィン!!
火花が散り、押し合いになったが、どちらも引かない。
(…!!足の傷が消えている……無詠唱のフィールド創造か!!)
押し合いでは勝負がつかず、お互い距離を取る。
「一発目で決めるつもりだったんだけど………あんた強いな。名前は?」
「無由。夜泣無由。」
名前を聞き、ラグナが驚いた顔をする。
「へぇ。珍しいな。レーゼなのに名前を捨ててないのか。」
「あぁ。もらう名前もないんでな。」
そう言いながら、ナイフを構える。
「そうか。俺はラグナだ。」
ラグナもそれに応じて、ナイフを構えた。
キン!キン!キィィィィン!!!
狭い路地裏に金属音と雨音が響く。
無由のギアが一段階上がる。
(こいつ………また無詠唱でフィールド作ってやがる!!)
最初は互角でやり合っていたけれど徐々に無由の方が優勢になってきた。しかし………先に焦りが見えていたのは無由の方だった。
何かを行うには必ずエネルギーが必要になる。
それはフィールドの創造にも言えることだ。
ただ、フィールドの創造に使うエネルギーの種類は人によって異なることが多い。
(だから……この勝負は俺がエネルギーが何かを見抜けるかどうかで話が変わってくる。)
ラグナの目が光る。
(………まずいな。)
無由の眉間にしわが寄る。
(雨で滑りやすくなって戦いづらさが増している。俺のエネルギーと相性が悪い。早く終わらせないと………。)
無由が神経を研ぎ澄ます。しかし注意は滑らないために無意識のうちに自身の足元へと向いていた。
その瞬間をラグナは見逃さなかった。
カァァァン!!
ラグナのナイフが無由のナイフを弾いた。
「くそっ!!」
無由が銃を取り出したが、ラグナが壁を使って回り込み、ナイフの刃を首元へと当てる。
「………くそっ。」
ナイフを首元へと当てられ、無由は仕方なく銃を捨てる。
「…………お前のエネルギー"体力"だろ?」
「ふふっ、大正解。……雨だからさ、滑りやすくなって無意識のうちに注意してたんだろう。」
「はぁ………最悪だ。無念だよ全く。」
無由が力なく笑う。
「……最後に何か言うことはあるか?」
「へぇ…殺し屋が情けをかけるのか。」
無由の脳裏に、幼い弟の姿が浮かぶ。
「幼い弟がいるんだ。明日誕生日のな。」
「…………。」
「だから……まだ死ねないんだ。」
すると上からもう1人の黒いコートに身を包んだレーゼの男が降りて、無由を救い出す。
「っ………!!!」
そこに現れたのは、かつて同期としてメルダーに所属し、相棒として戦っていた男。
そして、ゆらに戦闘技術を教え込んだ張本人。
「ムーン………!!」
「久しいね、ラグナ。」
少年の果て 灰都 @shoutaaaaaa
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