第7話 ダンジョン実地研修

冒険者免許の合格通知を受け取った次の日、愁似は緑区のダンジョン前まで来ていた。

そのまま臨時の冒険者組合の建物の中に入る。

ダンジョンごとに建物を用意するようだがまだまだ準備は間に合っていないようで臨時のものだ。

1ヵ月もしてないのの全国のすべてのダンジョンに建物そろえて運営できるようになっていたらそれはそれで怖いけどな。


建物に入るとでかでかと『冒険者組合は3F』の文字が書いてあった。

たしかに予約を入れないといけないほど人数いるし、分かりやすい方が良いだろう。

3階に行くと正面に受付があった。

そしてその受付には見目麗しい受付嬢が・・・ほんとにいるじゃん。

このレベルの人材をサクッと用意できる国は意外と優秀やな。


美人な受付嬢に要件を話しその場でⅠ型かⅡ型かを選び、冒険者免許証を受け取る。

愁似はⅠ型を選んだ。

今後ダンジョンに潜る際にはこの免許証が必須となる。

ダンジョン内で大きな傷がついたりした場合は申請さえすれば新品と取り換えることができ、無くした場合には住民票と簡易試験で再発行できる。


そのまま研修会場に行き予約した際に指定された席に座って待つ。

今日も早めに来たこともあってまだ周りにはそこまで人はいない。

ギリギリに来ていればあの美人な受付嬢さんに1対1で丁寧に免許証について教えてもらうことはできなかっただろうから早く来たかいがあった。

この前の試験でもそうだったが体を動かす仕事だからか男性の受験者が多かった。

体感男女比8:1くらいだっただろうか。

それを考えると人数以上に受付は込み合いそうだ。


少しすると隣に人が座った。

スマホを見ていたが気配を感じて隣を見てみると、同年代の女性がいた。

愁似が隣をチラ見したのがわかったのか彼女は話しかけてきた。


「こんにちは。君も今日の研修に出るんだよね。私は神谷かみや瑠璃るり。よろしくね」

「よろしく。俺は一鬼田愁似だよ。できるだけ怪我がないようにしないとね」

「そうなんよ~。怪我すると出費もかさんじゃうから嫌なんだよねぇ」

「神谷さんは一人なの?ナンパとかじゃないけど、今後ダンジョンに行った時怪我したら危ないし、怖くない?」

「そうやねぇ、一人やけど怖くないなぁ。ワクワクしてるよ!」

「そういう人もいるんだね。まぁダンジョンなんて言われちゃうと物語を想像してわくわくもしてきちゃうよね」

「そうそう。っていうか見た?あの受付のお姉さんたちめっちゃ美人じゃなかった?」

「すごくきれいだったね。冒険者組合はこの前の試験みたいなごつい人ばっかだと思ってたよ」

「それもファンタジー感加速させて今テンションマックスよ!でもこの前の副組合長も美人じゃなかった?」

「たしかに!副組合長は綺麗だった。ただ画面越しに一方的だったからあんま組合の人って感じなかったんだよんぁ。組合長はめっちゃぽかったけど」

「組合長は10年くらい冒険者やってるベテランに見えた。分かる」


こんな風に神谷さんと話していたら時間が来た。


「皆さんこれから順に呼んでいきます。呼ばれたグループごとに移動を開始してください。まずはA-1からA-9までの人、そのまま入り口に向かってください」


組合員の人の指示に従って9人ずつ呼ばれていった。

愁似と瑠璃はともにCのグループだった。


「こっからダンジョンも一緒っぽいね。頑張ろうね!」

「そうだね。よろしく」


そのまま指示の通りに動いていく。

ダンジョンの前に着いた時に誘導していた組合員の人が話し出す。


「本日このグループの担当になった高岡たかおかつづみです。よろしくお願いします」


高岡さんが担当してくれる愁似がいるグループは半分が女性だった。

多分問題が起きづらいように女性をある程度まとるようにしていそうだ。

ただ高岡さんが男性なのもあり全員女性にはしなかったのだろう。


「これからこのグループでダンジョンに入っていきますがその前にこの緑区ダンジョンのお話からします。このダンジョンの環境は遺跡タイプになります。確認されているのはスライムとゴブリンです。ゴーレムは確認されていませんが出てくる可能性があるので気を付けてください。いま前のグループがステータス確認を終えたので自分たちも行きましょう」


そのまま高岡さんは話をつづけながら歩く。


「このまま一度ダンジョンに入ってもらってステータスを確認します。その後一旦外に出て武器を選びダンジョンでの戦闘を経験してもらいます。ただ必ず戦闘できるかは分からないので2回目の研修も視野に入れながら行きましょう」


そう言いながらダンジョンに入っていく。


「まずは心の中でいいのでステータスと念じてください。そうすればステータスが出てくるはずです。ステータスにスキルが発現していた場合は報告をください」


愁似はステータスと念じた。


—————————————————————————————————————


名前:一鬼田愁似

種族:人間

ランク:G+

ロール:魔法使い

スキル:属性魔法(風・水)・疾走・身体強化(微)


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この前の副組合長のものをイメージしていたのでスキルの数に驚いている。

またそれにしては副組合長よりランクが低いので自衛隊の鍛錬はすごいのだとも感じた。


ステータスを見ていたら神谷さんが話しかけてきた。


「シュウジくんはスキルあった?私は無かったよ。残念」

「俺はあったよ。魔法が使えるっぽい?」

「なんで疑問形なの?魔法が使えるのいいなぁ。私も将来的に使えるようになるのかな?」

「一緒に身体能力あげるスキルもあったから。何が正解なんだろうね」

「ってことはシュウジくん魔法剣士できるってことじゃん!なにそれかっこいい!」

「ありがと。でもまだ使いこなせるか分からないしなぁ。とりあえず高岡さんのとこに行ってくるよ」

「行ってらっしゃーい」


すぐに高岡さんに話しかけに行く。


「高岡さん、スキルありました」

「一鬼田君か。何のスキルがあったかな?」

「属性魔法の風と水、疾走と身体強化(微)です。」

「えっ・・・4つもあったの?」

「はいありましたけど・・・」

「分かった。そうするとランクもG+かF-くらいはあるのかな?」

「そうですね。G+ですね」

「了解。最初から4つある人は自衛隊でも多分いなかったからすごいな。ただ慢心して死ぬようなことはしないでくれよ」

「分かりました」

「オーケー。じゃあ元に戻ってよし!」

「はい。ありがとうございます」


グループに戻るとすぐ高岡さんから声がかかった。


「他にスキル出たやつはいないか?・・・よし、じゃあいったんダンジョンから出て武器を選ぶぞ」


高岡さんに続いてみんなも外に出る。

後ろからついていこうとしたら入れ替わりで他の人が入ってきた。

外に出たら次のグループがダンジョンに向かっているところだった。

次のグループでフライングした人がいたのだろう。

多分ダンジョン内でめちゃくそに怒られるのだろうなと思いながら、みんなについて近くのテントに入った。


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10分ほど経ったところでみんな武器を選び終わり、ダンジョンに入った。

愁似の手には両刃の片手剣が握られていた。

さっきステータスを開いた時、魔法の使い方も頭に入ってきたので、神谷さんが言っていた魔法剣士スタイルで行こうと思う。


「さぁここからモンスターが現れたら戦ってもらいます。全員分会えるか分からないのでお手本は無しで始めてもらいます。ただいきなり一対一は厳しいので3人ずつのグループに分かれてもらいます。グループはそこの男子3人衆とそっちの女子3人衆、後は残りの奴らだ。自己紹介などしておいてほしかったが早速現れたようだからやってもらおう」


高岡さんがそう言うと音が聞こえてきた。

コツコツと。

ただ高岡さん含め想定外だったのはその数が多かったこと。

多くても2・3頭の群れを分断して3対1で確実にやる予定だったが正面からは数えるのがめんどくさくなるくらいのモンスターが来た。


そして2つ目の想定外が正面から来たのが”スケルトン”だったことだ。

遺跡タイプのダンジョンには通常いないモンスターだ。

高岡さんが正面に立ってくれて僕らに叫ぶ。


「緊急事態だ!そのまま皆は入口まで戻れ。私はここでこいつらの相手をする」


高岡さんのランクがいくつだか分からなかったがこれが捨て身であることは分かった。

高岡さんを見殺しにはできない。

そう思って前に進もうと思った瞬間、愁似の意識は無くなった。


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やっとここまで来ました。

これで序章が終わります。

ここから第一章に入るのですがモンスターがインフレしすぎないようにバランスを取るのに四苦八苦しています。

また諸々の設定についてもまだ詰めながらやっている部分もあります。

なので投稿が遅くなったらすみません。


ただここからがこの作品のメインになりますので楽しみにして待っていてください。

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