第3話 ワイの畑が元気になってる
次の日の朝、大五郎さんは目覚めると、昨日の出来事が夢でないことを確認するために早速納屋へと向かった。
昨日から鍬は異常な輝きを放ち続けていて、納屋全体も明るく照らされている。
「昨日も信じられんかったが、今日もこれだけ輝いてるとなるとやっぱり夢じゃなかったんやな」
独り言を呟きながら、大五郎さんは鍬を担いで畑へと向かった。
昨日ゴブリンたちが半分まで雑草取りを終えた畑は、見違えるほど整然としていた。
だがまだやるべき仕事が残っている。
「よし、今日も頑張ろうか」
大五郎さんは新たな指示を出した。
「昨日はよくやった。緑のファンタジーくんらは今日は残りの畑を耕して、野菜の種を植えとくれ。だが、まずはみんなで朝食だ。そこのでっかいファンタジーさん、昨夜捕った魚を調理してもらえるかな?」
ドラゴンが少し戸惑いながらも、「わかりました、マスター」と答える。
そして大五郎さんの指示をわかり易く仲間に伝える。
「よいか。緑のファンタジーくんとは、ゴブリン、お前たちのことだ。朝食の後、昨日の畑でマスターのご指示を確実にやり遂げろ」
そしてドラゴン自身は、おもむろに火をおこして魚を焼き始めた。
朝食が終わると、ゴブリンたちは畑へとぞろぞろ移動していった。
昨日の混乱を教訓に、ドラゴンが現場を仕切りはじめていた。効率的に仕事を進められるように役割分担を明確にしているようだ。
大五郎さんは妖精たちに材木の続きを集めてくるように頼んだ。
「小さなファンタジーちゃん、枯れ枝とか持てる倒木は、家を修繕するにも暖をとるにも必要や。寒い冬を越すには暖かい家が必要やからな」
妖精たちは元気よく「はい!」と答えて、昨日集めた材木の山に新たな材木を積み上げるために森へと飛んでいった。
畑でゴブリンたちといっしょに汗を流しながら、大五郎さんはふと昨日の出来事を振り返った。
ダンジョンが現れそこに住むファンタジーさん。
あり得ないことだが、彼らが自分に従ってくれていることは間違いなく、彼の心の中に新たな責任感が芽生えていた。
「ワイがマスターか……。まぁ、ええか。ワイの畑もこれで助かるしな」
そんなことを考えていたその時、突然、大五郎さんの目の前に小さな光の粒が集まり、ひとつのメッセージを形作った。
《ダンジョンコアの設定が必要です。マスターの意向に沿ってダンジョンは成長します》
大五郎さんは首をかしげた。
「ダンジョンコア? なんやそれは?」
光の粒はさらに集まり、今度は具体的な指示を示すように、空中に文字が浮かんだ。
《ダンジョンコア: 使い込まれた伝説級の鍬》
《ダンジョンコアの設定:
ダンジョンのテーマ(例:自然、機械、魔法など)
ダンジョンの難易度(初級、中級、上級)
モンスターの種類と配置
罠やギミックの設定
報酬の設定
領域拡張の設定》
「なんと。この鍬がダンジョンコアっちゅうもんか!?」
肩に担いだ鍬を両手に持ち直してしげしげと見た。
鍬は神々しく輝いている。ちょっと照れている気がするな。
大五郎さんはしばし考えた後、「テーマねぇ……ワイの畑と暮らし守るために、自然チョイスや! 難易度は初級でええやろな」とさっさと決めた。
ふたつとも例にあがった最初の選択肢だったのは偶然である。たぶん偶然である。きっとそうである。
「モンスターはファンタジーさんらがそのままおってくれたらええし、罠は……。まぁ、ワイの畑に人間なんかほぼ来ぇへんから罠なんぞいらんわ。あー、害獣駆除の罠はいるか。てか、ファンタジーさんらは仲間や人間を絶対傷つけたらアカンで。それだけはガチや。報酬は、ワイの畑で取れる野菜や果物、あと新鮮な山の空気やな。大自然の恵みが最高のご褒美や」
大五郎さんの言葉に反応して光が点滅を繰り返してやがて設定が完了すると、鍬から放たれる光が一層強くなり、納屋の中で何かが動いているような音が聞こえた。
《ダンジョンコアの格納先である地表の小屋周辺を拡張領域に設定しました》
そして、畑の周囲に緑が一気に広がり、自然のエネルギーが溢れだした。
「おお、なんや、ワイの畑がめっちゃ元気になっとるやん!」
大五郎さんは嬉しそうに笑った。ダンジョンの力が畑にも影響を与えているようだ。
その日の午後、ゴブリンたちが畑仕事を終えると、大五郎さんは彼らを集めて言った。
「今日もええ仕事したな。お前らおってくれるおかげで、ワイの畑めっちゃ豊かになっとるわ。これからも一緒にガンバろや」
ファンタジーさんたちは元気よく「はい!」と応える。
ドラゴンさんも静かに微笑み、妖精たちは楽しそうに飛び回った。
この日から、大五郎さんの生活は大きく変わった。
孤独だった日々から、ファンタジーさんたちと共に賑やかで不思議な毎日へと変わり始めたのだ。
彼らの力で、畑はますます豊かになり、大五郎さんはその中で新たな生きがいを見つけていくのであった。
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