第2話 ある英雄は 2
鬼の首領を討伐した女は首を片手に都へ帰還した
「おおっ英雄のお帰りだ!」
「鬼は死んだんだ!」
「これで鬼の恐怖から解放される!」
群衆は歓喜する
何せ自分達のずっと前の世代から鬼と人は争ってきたのだ
其が今日終結したのだ 。人々は泣き 笑い 抱き合い 喜んだ
女はその光景を見ても無表情だった
「鞘無朔夜《さやなしさくや》
此度の働き大義である」
帝よりそう言われ 報酬として国一つと城が与えられた。 其に値する働きだと 。
女はいや、「 朔夜」はそれでも無表情であった
「大将!国ですよ国!いや〜俺らも国が持てるなんてねぇ」
「おい、あくまでも朔夜様の国だお前のじゃない」
都から出た朔夜の後ろには二人の従者がいた
片方は小柄で茶髪 人懐っこい表情を浮かべた少女で
もう片方は、背の高い 黒髪のボブカットで 目付きは鋭く 胸がデカイ女性である
名前を「那須乃弦」《なすのつる》 「武蔵坊紅花」《むさしぼうべにか》といい
弓と薙刀の達人である。
この二人も鬼ヶ島にて数多の鬼を屠っている
「私は国よりも城よりも欲しいものがある」
「もしかして」「うん。あいつの首」
「帝はあいつの事知ってたんですか?」
「知らなかった。その代わりに国と城貰った」
実は朔夜は酒呑童子の討伐報酬に「あいつ」の情報を求めた。だが帝は知らなかった
むしろ其は何者だと聞かれた
だから答えた
「姉」だと
その日は帝から貰った城で壮大な宴会が開かれた
弦は大好きな肉をたくさん食べ
紅花も普段飲まないお酒を飲み
鞘無家に仕える者達もどんちゃん騒ぎであった
だが朔夜は此所でも無表情であった
一番欲しい姉の首。其を手に入れなければ
あの日から進めない
「少し夜風に当たってくる」そう言って
朔夜は外に一人で出た
夜空には憎たらしいほどに美しい満月がのぼっていた
「あいつの首を必ず母上の墓前に供える。絶対だ絶対にじゃなきゃ私の生きてる意味が」
その時であった
「汝、願いを叶えたいか」男とも女ともとれる不気味な声が突然聞こえた
「誰だ!気味の悪い声だ首を落としてやるから出てこい!」朔夜は片時も離さない刀を構えた
「我なら汝の欲しいものが何処にあるか知っている」 「何!?何処だ!答えろ!!」
「この世界ではない異なる世界」
「世迷い言を!首を落としてやる!!」
「嘘ではない汝の姉は其処にいる」
「ならば連れていけ!嘘であれば首を落としてやる!」
目の前に黄金の杯が現れる
「汝を異なる世界へ」
その日 一人の英雄が消えた
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