第6話

ココアを彼と一緒に飲み話に花を咲かせていれば、突然遠ざかっていた音が近づいたことに驚き先程のように頭を数回撫ぜ、大丈夫と耳に零す。その大丈夫という言葉や彼の声に私は安心し、胸元へと顔を擦り寄せれば、頭上からくすぐったいよ、なんて嫌がる素振りをしないのをいいことにグリグリと顔を更に押しつけるようにする。

その間の彼の穏やかな表情を浮かべていたことを私は知らない。


水を回してシンクに置き、寝ようか、とそう言い私の手を軽く引き勝手知ったるかのようにベッドへと歩みを進める。

その温度が心地よくてつい力を入れてしまえば、彼もそれに応えるかのようにやんわりと握り返してくれたことに胸の中のくすぐったさに口元をむずむずさせる。


そんなに距離がないためすぐ着きベッドへと入れば壁側へと追いやられる。顔に布団を被せたかと思えばぼすんと彼が入ってくるから目を剥く。思いやりがないんじゃないの?と一言文句でも言おうと開きかけた言葉を、思わず彼との距離の近さに恥ずかしくなり空気と一緒に飲み込み布団で顔を隠せば、私の反応を見て楽しんでいたのか彼はまた小さく笑い声を出す。その目が、顔が優しく笑うから何も言えなくなるから。

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