第7話
「ほら、おいで」
そう言って右腕を伸ばす彼に素直に近づけば掌が優しく耳を覆う。そろりと彼を伺えば目を細め笑う。ズルいなんて、彼の方ではないか。そう言ってやりたいのに結局言えない私は息を吐くしかない。
動こうとしない私に焦れたのか、腕を引かれすっぽりと腕の中へと閉じ込められた。先程も思ったが、細いとばかり思っていた彼はしっかりとオトコの人の体つきをしていることに甘く、心が甘く痺れた。
程よい温もりに眠気をそそられるも、近くで鳴る音のせいでせっかくの眠気が醒めてくる。どうしようかとあぐねいていると額を胸元へと押し付け、腕で頭を抱え込むようにし引き寄せた。規則正しい音に引いていた波が押し寄せてきた。ありがと、と内心で言い抗えぬそれに身を委ね、閉じようとする瞼に従い私は暖かくたゆたう波へと浸かる。
「怖いと思うなら僕がいつだって守ってあげる」
「だからおやすみ、」
腕の中で微睡む私を見て晒された額にそっと、優しく唇を落とし彼も瞼を下ろした。
雨 水埜ふぅか。 @Jagger
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