第5話

しゃくり上げる肩に思わず胸元のシャツを皺が寄るのも構わず、空いていた手を頭へと伸ばし優しく撫ぜる。その感触に擦り寄れば喉をクツクツと鳴らし、髪に1つ口付けを落とした。

そっと瞳を閉じればぼろっと大きな滴が胸元にシミを作る。


トクン、と規則正しい心音に耳を傾けていれば幾分かは安心し、彼から離れカーディガンの袖で頬を拭った。

そんな私に彼は小さい子供をあやすかの様に目線を合わせ、目尻に溜まった滴を優しく指の腹で拭ってくれ、ニヤニヤと何処か悪戯っ子のような笑みを浮べながら、



「なぁに、寂しかった?」

「うん、来てくれるって思ってた」

「...まったく、君はズルいよ。そういうとこ」

「ごめんね。温かいものかコーヒーでも飲む?」



着替えはお風呂場にあるから、と付け足し彼をお風呂へと促す。

とりあえずポットは沸いてるから何を飲もうか。たしかココアが残り少なかったはずだ、と手を伸ばし考える。中を覗けば案の定粉末は残りが少なかった為、大ぶりのマグカップを2つに注げばココアの甘い匂いが広がる。

甘党の気がある彼のカップには砂糖を少々いれ、ココアの匂いを鼻腔で楽しんでいれば、上がった彼に出来たてを渡す。小さくやった、と言う彼に口元を緩ませる。

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