第3話

「...もしもし?」

「遥、」

「っ、なぁに?」



外ではゴロゴロと鳴り一層と激しさを増しており、音に体が反応してしまった。どうもこの雷は昔から苦手で大人になったとはいえ、未だにそのことに慣れていない。

聡い彼にはどうやらバレたらしく、話すその声色は心配の色と言葉に誤魔化すことを諦める。バクバクと鳴る心臓の音を抑えようと声を出すも、抑えきれず情けない声で大丈夫と紡ぐ。正直自分でも何が大丈夫なのか分からないが、彼にそう伝えれば何やらゴソゴソと物音が聞こえてくる。



「遥、今から行くね」

「え、いや、外凄い雨なんだよ!?」

「雨凄いよねぇ。」

「なに呑気なこと言ってんの?!!それに明日は、」

「どうせこの雨だし、明日ってか今日は大学も流石にないでしょう」

「でも、」

「んじゃ、行くから起きててね」



そう短く言い通話を切り、耳には電子音が聞こえてくる。私は端末を持ったまま外を見遣る。大きな雨粒は地面を叩きつける程の勢いだ。こんな中にやって来るなんて信じられない、そう思うも頭の片隅に来てくれることに喜んでる自分がいた。ほんの少しだけ胸がホッとし、いつの間にか握っていた服の裾をゆっくりと皺を伸ばす指は、強く握りしめていたのか指先は白くなっていた。


こんな天気の中に来ると彼の言葉を頭の中でなぞり、息を吐く。不安でしょうがないが、1人でいるより幾分かは安心するので嬉しいと思う反面、やはり心配が勝る。

とりあえずは彼の為に温かいものをすぐ出せるようにと、お気に入りの藍色のカーディガンを羽織りキッチンでコーヒーメーカーをつけに行くことにする。

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