第2話 覚醒

喜一:「うわっ!眩しい!!!ここどこ???」


目を覚ますと太陽の光が降り注ぐ外にいた。

周りを見渡すと見慣れない景色。


自分の住んでいた家、近所の家などもはや無く、そこには木々が生い茂り草むらが当たり一面を覆い、湖もあり、遠くには見たこともない山が見える。


喜一:「はい!!異世界〜!!!!来ました!来ました!勝ち確定!!!」

大声で叫ぶ。


彼はやはり理解が早い。異世界へ憧れ続けていたせいなのか、地頭が良いからなのか、すぐに受け入れる。


喜一:「えぇと、ステータス表示!」

何も起きない。その後も異世界アニメで培った知識全ての言葉や動作を行うが何も起こらない。


ただ、40歳の男だったはずが、身体も軽く湖の水面に映る顔は若かりし頃の自分だった。


喜一:「とりあえず、異世界転生はしたんだな。ただ、スキルや自分のレベルとか何も分からないのはちょっときついな。」

異世界転生したら、自分のステータス、レベル確認してモンスター倒してレベル上げて魔法やら剣やらで圧倒して、可愛い美女と冒険!


彼はそれを望んでいたのだろう。


喜一:「まぁ、せっかくだし色々見てまわるしかないか。誰かに会えたり、街があれば言葉が通じるか、この世界はなんなのか手掛かりにはなるからな」


彼は当てもなくただただ歩き出す。

服装は就活の時のスーツ姿だった。

革靴が痛いのか、久しぶりに歩くからなのかすぐに座り込む。


そして、ついには寝転がる。無防備にも程があるが、異世界転生したからと言ってモンスターや盗賊がいるとは限らない。ただ自然豊かな異世界なのかもしれない。


まぁ、そんな事はない。


男性:「んん〜?変な奴が変な服着て寝てやがる。兄貴、殺りますか。」


男が忍び寄り、剣を喜一に刺そうと構える。


謎の声:「危険察知!背後より殺気確認」


喜一の脳内に突如、声が響き渡る。


喜一:「うわぁ!!!!!」


飛び上がって、わけも分からず方向も適当に走り出す。


兄貴と呼ばれていた、男にそのままぶつかる。その男は屈強な身体をしており、身長も言うに190cmはありそうな程。喜一はその男の胸に当たっていたがそのまま弾き飛ばされた。


喜一:「いってぇ!えぇ?プロレスラー???」


我に返り、当たりを見渡すとそこには4人の男達がいた。四方を囲まれ、これぞ、四面楚歌とも呼ぶべきか。


喜一の腰が抜け、へたり込んだ。


喜一:「あぁ!早い!どこかもわかんねぇし、スキルもレベルも装備もなんもねぇし、負けでしょ。そっちは4人?鎧とか着て、武器も持ってチートかよ、こちらはリクルートスーツですっ!!(白目)」


男達:「べらべらなんか大声で喚いてなんだこいつ?おい!早く殺せ、なんか持ってんだろ、変な服着てるし、身包み全部剥がせ、あとは、奴隷商人にそのまま売っちまおう!」


喜一は苛立っていた、約10数年引きこもり、異世界転生へ夢焦がれ、ようやく辿り着いた世界。それがもう終わりを告げようとしている。


喜一:「、、くそが、おもしろくもねぇ、なんだよ、さっきの声も、声だけだしよ、、イライラするわ、、、」

下を向きぶつぶつ呟く。


ぶつかった兄貴と呼ばれていた男が、喜一を殺そうと手に持っていた大きな斧を振り上げる。


ぐちゃ!聞いた事もない音が鳴る。


振り上げられた斧は天高く上げられたままだ。


屈強な男の腹を越え背中から、喜一の腕が貫通していた。鎧すらぶち抜いている。


喜一の腕から血が滴っている。

喜一の頭上から男が口から吐いた血反吐が降り注ぐ。


他の男達3人がその光景を見て一斉に飛び掛かる。


喜一は冷静だった。

朝起きて、顔を洗い、歯を磨き、朝ご飯を食べ、会社へ出勤する為の着替えをする毎日のルーティーンの様に。


左から来る男の足を体勢を低くし、腕を横に剣を振るうが如く斬る。二本の足は切り裂かれ飛んで行く。


右から来た男を、カエルジャンプの様に飛び上がり顎に手刀を突き刺す。

そのまま、振り上げ顔が真っ二つに引きちぎられた。


当初、喜一を殺そうと近づいて来ていた男が後ろから来ていたが、一部始終を見ていた男は剣を置き命乞いを始めた。


男:「頼む!殺さないでくれ!金に困ってたんだよ、家族が家で待ってて、、」


喜一はその男の頭を蹴り飛ばす。

頭は首から削げ落ち、地面を転がって行った。


彼に何が起きたのだろう。彼は気がついているのだろうか。脳内に聞こえた声は何だったのだろうか。

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